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「あれんじ」 2010年12月18日号

【見る・知る・感じる 熊本まつり探訪】
破魔弓祭(はまゆみさい)(的ばかい)

“的”奪い、沸き立つ水しぶき
約850年の伝統を誇る新年行事


開催日:1月16日(日)
開催場所:四王子(しおうじ)神社(玉名郡長洲町長洲)
JR鹿児島本線長洲駅より徒歩20分、南関・菊水インターから車で約40分
(問)長洲町まちづくり課
☎0968(78)3219

奪い合った的をお守りに

 玉名郡長洲町の四王子神社で、毎年1月第3日曜に行われる破魔弓祭。始まりは約850年前とも言われ、男たちが的を奪い合うことから、“的ばかい”(ばかいとは、奪い合うという意味の方言)の名でも知られています。
 永暦元年(1160)に筑後国三笠郡の四王子嶽(だけ)(現在の太宰府市付近)より長洲町洲崎の浜の岩屋(現在の洲崎神社)に神を迎え、その際、高御座(たかみくら)を設けて祭ったという言い伝えがあります。ご神体を四王子神社に遷宮する際に、氏子たちが円座を奪い合いお守りにしたのが、「的ばかい」の始まりと言われています。
 現在、祭りで使う円座は、直径約60センチ、重さ6キロ。藁と麻で編まれたこの大きな“的”は、祭りのシンボルになっています。


境内から有明海へ 締め込み姿でぶつかり合う勇姿

 的は16日の朝、洲崎神社に奉納され、その後、長洲町内を通り四王子神社に運ばれます。四王子神社に到着すると、まずは神主が的をめがけ、三本の矢を射る破魔弓祭の神事が執り行われます。
 その後、的が参加者に渡されると、冬空のもと締め込み姿の男たちが、威勢のいい「まーと、まーと」のかけ声と共に、体から湯気をたちのぼらせ的を奪い合います。その気迫のこもった勇姿は、境内から有明海に移りクライマックスを迎えます。海の中で奪い合った的は、祭りの後には裁断され、家内安全、無病息災を願うお守りとして各家庭に配られるそうです。


【教えてください】

「1年を占う祭り」
 的に矢を射る祭りは、秋から春にかけて多くの地域で行われています。的はもともと、神の意志を占う重要な道具と考えられており、破魔矢には文字のごとく、“魔を払う”という意味が込められているようです。この時期の祭りは、矢を射ることで作物のできを占うという意味を含んでいます。
 しかし、「的ばかい」のように年始めに行われる祭りは、その年を占う=「年占(としうら)」的な意味合いを持つようです。年占の祭りには、米、あわなど数種類の穀物と竹筒を一緒に炊いてお粥(かゆ)にし、その筒に一番入っていた穀物がその年は豊作になるという「粥占い」もあります。
 新しい年を占う祭りには、その年1年を豊かに過ごしたいという人々の思いが込められているのかもしれません。(談)

熊本大学60年史編纂室長(前熊本大学大学院社会文化科学研究科民俗学教授)
安田 宗生氏