【元気の処方箋】
命のリレーの最後のバトン 臓器移植医療
昨年は臓器移植法の施行から25周年という年でした。それでも日本では、臓器移植に関する情報に触れる機会は多くありません。そこで今回は、移植医療の基本的な情報をお伝えし、臓器提供意思表示の重要性や方法なども紹介します。 (取材・文=坂本ミオ、イラスト=はしもとあさこ) |
【はじめに】 不可欠な、善意による臓器の提供 |
【表】日本で行われている臓器移植
WHO(世界保健機関)の調査から(出典:GODT) 重い病気や事故などにより臓器の機能が衰え、他の治療法では治せない状況に陥ってしまった場合に、他の人からその臓器の提供を得て機能の回復を図るのが臓器移植医療です。そのため、臓器移植には第三者の善意による臓器の提供が不可欠です。 |
【日本の現状】 少ない臓器提供 肝移植件数(100万人当たり)は世界45位 |
【図1】国別の人口100万人あたり肝移植
(脳死・心停止下+生体)件数(2020年) WHO(世界保健機関)の調査から(出典:GODT) 日本で臓器移植を希望し待機している人は約1万5千人といわれています。それに対して移植を受けられるのは年間約400人です。また、日本では脳死下の臓器移植が少なく、生体臓器移植が主流。欧米とは異なる状況が続いています。 |
【図2】国別の臓器提供数(2020年)
WHO(世界保健機関)の調査から(出典:GODT) |
【図3】脳死肝移植と生体肝移植の割合
日米の症例数の比較(2019年) 日本移植学会 2020臓器移植ファクトブックから |
求められている 自国での臓器移植の推進 |
さまざまな配慮や繊細さが求められる生体臓器移植手術が多い日本では、医療技術が高度化する一方、多くの人を助けられる状況にはなっていません。 |
【熊本の現状】 肝臓、腎臓の移植手術が可能 提供臓器は全国に |
【図4】熊本大学の肝移植(2017年10月〜2021年10月)
熊本で脳死下および心停止後の移植手術を受けられるのは、公益社団法人日本臓器移植ネットワークが移植施設として認定した熊本大学病院と熊本赤十字病院になります。 |
【意思表示】 したい/したくない 等しく尊重される意思 |
医療の進歩は、臓器移植によって助かる命を増やしています。そして、移植外科医は命のリレーの最後のバトンを託される立場として手術に臨んでいます。しかし、ドナーがいて初めてそのチャレンジができます。 |
【Q&A 日比先生に質問!】 |
Q高齢でも臓器提供できますか? |
話を聞いたのは
熊本大学病院 小児外科・移植外科 教授 日比 泰造 移植医療センター長 ・日本外科学会 専門医・指導医 ・日本消化器外科学会 専門医・指導医 ・日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医・評議員 ・American Society of Transplant Surgeons認定医 ・日本移植学会 認定医 ・日本がん治療認定医 |