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「あれんじ」 2023年1月14日号

【四季の風】
【第60回 小春日の地球】

 今日から十月、秋もたけなわ。鵙(もず)も鳴いている。秋風に誘われて、旅に出よう。

無辜(むこ)死の累累(るいるい)として花の冷        中正

俳誌「阿蘇」主宰 岩岡中正


無辜(むこ)死の累累(るいるい)として花の冷        中正

十薬の花ウクライナの墓、墓、墓                〃

流燈のひとつウクライナへ流す                 〃

背嚢(はいのう)も銃もしぐれてゐるならん           〃


 昨年二月二十四日のロシアのウクライナ侵攻開始から、もうすぐ一年。右の句のように、美しい「花冷(はなびえ)」の春、白い十字の花の「十薬」の咲く夏、お盆の川へ流す「流燈」の秋、そして思いの深い「時雨(しぐれ)」の冬へ。季節はめぐったが、戦争は終わらない。

 コロナという疫病(えやみ)、戦争の無残、核への恐怖と、いつ果てるともない不安の中の地球。でも先日宇宙飛行士の毛利衛(まもる)さんの話を聞いていたら、外から見れば地球はひとつ。いつまでも、宇宙空間に浮かぶ、いのちある美しく平和な星であれと願うばかり。

小春日の地球一大浮遊体     中正

 この句、通町の電車通りにある、水に浮いて回る不思議な石の球を思い出してつくった。