俳誌「阿蘇」主宰 岩岡中正
無辜(むこ)死の累累(るいるい)として花の冷 中正
十薬の花ウクライナの墓、墓、墓 〃
流燈のひとつウクライナへ流す 〃
背嚢(はいのう)も銃もしぐれてゐるならん 〃
昨年二月二十四日のロシアのウクライナ侵攻開始から、もうすぐ一年。右の句のように、美しい「花冷(はなびえ)」の春、白い十字の花の「十薬」の咲く夏、お盆の川へ流す「流燈」の秋、そして思いの深い「時雨(しぐれ)」の冬へ。季節はめぐったが、戦争は終わらない。
コロナという疫病(えやみ)、戦争の無残、核への恐怖と、いつ果てるともない不安の中の地球。でも先日宇宙飛行士の毛利衛(まもる)さんの話を聞いていたら、外から見れば地球はひとつ。いつまでも、宇宙空間に浮かぶ、いのちある美しく平和な星であれと願うばかり。
小春日の地球一大浮遊体 中正
この句、通町の電車通りにある、水に浮いて回る不思議な石の球を思い出してつくった。 |