●唾液から感染
保育園に通う年頃の子どもが発熱とともに唇と口の中に水疱(すいほう)ができて痛がり、飲んだり食べたりできなくなる―。これが、単純ヘルペスウイルスによる感染症の症状です。主に唾液などから感染して発症します。唾液に直接触れるだけでなく、ウイルスがついたタオルやコップなどからも感染するため、共用を避けるなどの感染対策が必要です。
このウイルスには1型と2型があります。1型は唇や口の中に水疱を作るヘルペス歯肉口内炎や口唇ヘルペスの原因に、2型は性器ヘルペスの原因として知られています。
抗ウイルス剤があり、1型も2型も内服薬、点滴、軟こうによる治療が可能です。1型は口内炎だけでなく、まれに子どもに脳炎を起こすことがあり、この場合、けいれんや意識低下などの症状が見られるので集中治療が必要となります。
●新生児ヘルペス 感染症にも注意
このウイルスは治った後、1型は顔の神経(三叉(さんさ)神経節)に、2型はお尻の周りの神経(仙骨神経節)に入り込んだまま一生残る厄介な性質を持っています。初回のように口いっぱいに水疱ができることはありませんが、口角あたりに小さい発疹ができて痛い口唇ヘルペスを何度も繰り返すことがあるのはそのためです。強いストレスや疲労、直射日光を長時間浴びる、などで再発するとされています。
2型は、分娩の際に新生児に感染すると新生児ヘルペス感染症を起こす場合があります。症状が分かりにくく、治療が遅れると命に関わることがある重篤な病気です。多くは妊娠をきっかけに神経節に眠っていたウイルスが再活性化して発症し、新生児に感染します。母体に少しでも症状(水疱や痛み)があるときは、必ず産科の先生に相談しましょう。 |