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「あれんじ」 2022年6月4日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第102回】子どもたちの成長に 心動かされる毎日

女性医療従事者によるリレーエッセー【第102回】

【第102回】子どもたちの成長に 心動かされる毎日
熊本市民病院 
新生児内科 
医師
西村 円香

 私は小児科医として5年目となり、赤ちゃんから中学生まで多くのお子さんやそのご家族にお会いしてきました。
 病院に来る年齢や病状はさまざまですが、共通していることは、子どもたちが日々成長し続けているということです。体格も大きくなりますが、精神的な成長も目を見張るものがあります。
 治療のために週2回の注射が必要な6歳の男の子がいました。元気になるために注射が大事だと話をしても、注射が嫌という気持ちが上回って、毎回全力の抵抗を見せます。かわいそうだからとやめる訳にはいかないので、心を鬼にして、お母さんにその子の身体を包み込んでもらい、私が腕を取って注射をしていました。そんな子が半年もたたないうちに、注射の時に自ら腕を出し、注射後も「全然痛くなかったよ」と余裕の表情を見せるのです。私はお母さんと共に驚き、成長を喜び、感慨深いものがありました。
 また、12歳の男の子は痛みや恐怖を伴う治療の後、「僕に関わってくれた人ありがとう」と、眠るお薬で朦朧とした意識の中、感謝の気持ちを伝えてくれました。自分が同じ立場だったら、そんな言葉が出てくるだろうかと考えさせられました。その子の精神レベルは私のはるか上にあるようでした。
 小児科医としてお子さんに携わる中で、うれしい気持ちや自分も成長しなければという励ましをいただいています。まだまだ未熟な点が多いですが、人に安心感を与えられるような医師を目指し、精進していこうと思います。