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「あれんじ」 2022年3月5日号

【家族の心配・不安に応える 子育て応援クリニックQ&A】
子どもの難聴

Q.赤ちゃんの聴力が気になります。

防ぎたい、妊娠中のウイルス感染による赤ちゃんの難聴

【風疹はワクチン接種で予防を】

 生まれつき聴力障害のある子どもは、1000人あたり1〜2人とされ、まれではありません。課題は、妊娠中に母親が風疹ウイルス、サイトメガロウイルスなどに感染して赤ちゃんが難聴となるケースです。

 妊娠約20週までの妊婦が風疹に感染すると赤ちゃんに難聴を引き起こす場合があり、妊娠12週までに感染すると白内障や心臓病を合併することがあります。これらは、ワクチンを接種して免疫(抗体)をつけることで予防可能です。

 予防接種が任意だった時代や定期接種になった後も接種率が低かった時代に育った夫が外で感染し、家族に広げるなどの感染リスクが知られています。定期接種以前に成人になった方に対する抗体検査や予防接種には各自治体が費用を補助しています。自治体のホームページをチェックしましょう。

【早期発見には任意の聴力検査を】

 サイトメガロウイルスも免疫が十分でない妊婦に感染し、赤ちゃんに聴力障害を引き起こす場合があります。このウイルスに対するワクチンはなく、乳児の治療のための抗ウイルス剤があります。生後2カ月以内の早期に発見し治療を始めることで聴力が改善すると報告されています。

 早期発見できる唯一の方法が、産婦人科で実施されるAABRと呼ばれる乳児の聴力検査です。任意検査のため、両親が希望しない限り行われません。自費検査ですが、実施をお勧めします。

 ウイルス感染は防御が基本です。妊娠中は食事内容や家族との過ごし方も重要です。生まれてくる子どもが健やかに成長できるよう準備しましょう。詳しくはかかりつけの産婦人科、耳鼻科、小児科の医師にご相談ください。


熊本大学大学院
生命科学研究部
小児科学講座
准教授
松本 志郎