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「あれんじ」 2022年3月5日号

【元気の処方箋】
ある種の疾患群の総称 膠原(こうげん)病を理解しよう

 病院で最近、「リウマチ・膠原病内科」といった外来名を目にすることがあります。リウマチはよく聞くけれど、膠原病とは何なのでしょう。今回は、膠原病についてお伝えします。(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

【はじめに】 膠原病は「病気のグループ」名

 膠原病は、全身の血管や皮膚、筋肉、関節などの結合組織(さまざまな組織の中にある膠原線維からなる部分)に炎症や変性を起こす疾患群の”総称“です。つまり「膠原病」という固有の疾患はなく、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの「病気のグループ」を表す言葉です(表のような疾患が含まれます)。

 関節リウマチだけでも日本に70万人から100万人の患者がいると考えられており、決してまれな疾患ではありません。

 膠原病の原因はこれまでのところ残念ながらよく分かっていませんが、病態は本来、感染症などから身体を守る「免疫」が何らかの理由で異常を来して自身の身体を攻撃している状態ということが分かっています。継続的な診療を必要とする方も少なくありません。人から人にうつったりはしません。

【表】膠原病の代表的な疾患
◎関節リウマチ
◎全身性エリテマトーデス
◎全身性強皮症
◎多発性筋炎・皮膚筋炎
◎ 混合性結合組織病
◎シェーグレン症候群
◎ANCA関連血管炎
◎高安動脈炎
◎側頭動脈炎・巨細胞性動脈炎
◎成人発症スチル病
◎ベーチェット病 など


【どんなときに膠原病を疑うのか】 関節痛や発熱などが多いが、症状は多様

 膠原病は全身の病気ですから、疾患の種類によってさまざまな症状が見られます。

 頻度が高いものとしては、関節の痛み、長く続く発熱、皮膚の異常などがあります。

 また、健診で検査の異常などから見つかる場合もあります。


【検査や診断】

■問診、診察、検査で診断

 医療機関で膠原病が疑われた場合、まずは受診に至った詳しい経過をお聞きします。また、過去に診断されたり治療を受けたりした病気、家族に同じような症状の方がいないかも確認します。疾患を絞るために大変重要なプロセスです。

 続いて診察をします。症状のあるところを中心に、関節の状態、皮膚の状態、髪の毛、目、口の中、胸の音、おなかなど文字通り頭の先から足の先まで全身を診ます。

 これらの情報の中で、膠原病のいずれかの病気を疑うときには、それぞれの病気に関連する検査を行います。検査は血液や尿の検査、必要に応じて、レントゲン、CT、MRI、エコー、内視鏡などの画像検査を組み合わせて行います。また、必要な場合は組織の一部を取ってきて顕微鏡で見る検査(生検)を行うこともあります。

■一人一人に適切な検査を

 膠原病の中にもいろいろな病気があり、患者さんそれぞれに病気の状態が異なるので、一人一人に適切な検査を組み立てて実施します。検査は外来で行う場合も、入院して集中して行う場合もあります。

 検査の結果をもとに、膠原病の中のどんな病気であるか(病名)、その病気の程度(重症度)、ほかの病気の合併がないか(合併症)を評価します。病気やその重症度、また合併症により、治療方針が大きく異なります。


【治療】

■高い効果が期待される薬剤も

 膠原病の治療は、薬による治療、機能回復を目指すリハビリテーション、病気を理解し日常生活を整えるケア、関節変形や臓器・血管の修復のための手術などがあります。それぞれの病気によって適切な治療法が異なり、複数の治療法を組み合わせて行うこともしばしばあります。

 特に薬による治療は、膠原病の多くが「炎症」や「免疫の異常」を起こしているため、炎症や免疫を抑えるさまざまな治療薬が検討されます。具体的には、ステロイドや免疫抑制剤という薬剤を用います。

 ステロイドと聞くとその副作用から使用をためらわれる方もおられますが、医師・患者ともに注意しながら用いることで、副作用を最小限に抑えて治療を行うことが可能です。

 また近年、炎症や免疫に関与するタンパク質であるサイトカインの働きを直接抑える生物学的製剤やJAK阻害剤という薬剤が出てきて、より高い効果が期待されるようになりました。

■患者自身が病気を理解しよう

 治療法の選択には、病名、重症度、合併症、患者さんの体力などを考慮して、それぞれの病気に最適と考えられる治療法を提案します。このとき、治療にかかる費用についても相談します。全てではありませんが、病気によっては公的な助成制度もあります。受診されている医療機関にご相談ください。

 なお、全ての薬剤には副作用があり、注意が必要となります。しかし、医療者と患者双方が気を付けておくことで多くの場合は対処が可能です。このためにもご自身の病気や治療を医療者に任せきりにせず、理解することが大切だと考えます。


【療養の注意点】

■薬を自分で勝手に調整しない!

 最も大切なことは、治療薬を自身で調整しないことです。副作用が気になり自分で減薬したり、早く良くなるようにと薬を過剰に服用したりしては、薬の十分な効果が期待できないのみならず、病気の悪化や薬の副作用などで体を危険にさらしてしまう恐れがあります。主治医とよく相談しながら、納得をして治療を受けましょう。

■感染症の予防をしっかりと

 ステロイドや免疫抑制剤による治療は、異常な免疫だけでなく、身体を感染症から守る正常な免疫にも影響します。このため感染症の予防として、外出時のマスク着用、帰宅後・食事前の手洗いやうがいは励行しましょう。ほかにも、起床・就寝時間などの規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動なども治療を円滑に進める上で大切なことです。

 全てを毎日完璧に! というよりも、少し余裕を持って長く続けることが重要だと思います。そのためにもぜひご家族も病気のことを一緒に理解して、協力をお願いします。


【おわりに】

■膠原病の治療は日進月歩

 膠原病と診断されて、つらい気持ちになられた方もおられると思います。しかし、膠原病の治療法は日進月歩です。私たちも患者の皆さんが日常の生活を取り戻せるように、日々研さんを重ねています。

 一緒に前を向いて治療を頑張っていければと思っています。


執筆者

熊本大学病院
膠原病内科
平田 真哉 講師
・ 日本リウマチ学会認定専門医・指導医
・ 日本臨床免疫学会免疫療法 認定医