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「あれんじ」 2022年1月8日号

【元気の処方箋】
適切なスキンケアで防ごう 乾燥による湿疹

 冬場の乾燥による肌荒れは誰もが経験することではないでしょうか。それがかゆみや発疹などの症状につながることもあります。今回は、乾燥による湿疹についてお伝えします。(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

【はじめに】 冬場に多くなる皮膚の乾燥に注意を

 皮膚に炎症が起きると、ブツブツ(発疹)や赤み(紅斑)が出ます。かゆいため引っかいてしまうと皮膚が傷ついてしまい、汁(滲出液)が出たり、出血したりします。この状態を「湿疹」と診断します。

 湿疹はなぜ起きるのでしょうか? 原因はたくさんありますが、特に冬場に最も多くなる原因は、皮膚の乾燥です。今回は、皮膚の乾燥の原因やアトピー性皮膚炎との違い、スキンケアや治療法について、皆さんの疑問にお答えします。


【Q.皮膚の乾燥の原因は何?】A.年齢による皮脂分泌量の変化です

 肌の潤いを保つものに皮脂がありますが、皮脂の分泌量は年齢によって大きく変化します。生まれたばかりの新生児では多く分泌されていますが、小児期にはいったん少なくなります。そして思春期から増加し始め、女性では10〜20代、また男性では30〜40代にピークを迎え、その後次第に減少していきます。50代あるいはそれ以上の方は、どんどん肌の潤いが保てなくなっていきます。

 50代以上の方であれば、若い時と比べて皮膚が乾燥しやすいことを自覚されていると思います。

 ここで注意してほしいのは、子どもの肌は一見みずみずしく見えますが、意外と乾燥しているということです。そして皮膚の乾燥を放っておくと湿疹の原因になります。


【Q. 乾燥するとなぜかゆくなるの?】A. 内部で炎症が起きたり、感覚神経が伸びたりするため
【図1】乾燥するとかゆくなる仕組み

 2つ理由があります。1つ目は、皮膚が乾燥すると目に見えない皮膚の内部で軽い炎症を起こすから。2つ目は、皮膚に張りめぐらされた神経の問題です。

 脳に「かゆい」という情報を伝える感覚神経というものが皮膚にあります。本来は真皮という皮膚の奥の部分にとどまっています。ところがこの感覚神経が乾燥肌になると皮膚の表面近くまで伸びてくるのです。そのため、日常生活のわずかな刺激でもかゆみを感じるようになってしまいます(図1)。かゆいと皮膚を引っかいてしまい湿疹の原因になります。


【Q. 乾燥肌や湿疹とアトピー性皮膚炎の違いは?】A. どちらもアトピー性皮膚炎の症状の一つだが、イコールではない
【図2】乾燥肌

 乾燥肌は、単純に皮膚が乾燥しただけの状態です(図2)。乾燥肌はアトピー性皮膚炎の症状の一つですが、乾燥肌=アトピー性皮膚炎ではありません。
アトピー性皮膚炎は乾燥肌だけでなく、いろいろなものにアレルギーを起こしやすい体質や、普通はかゆくない刺激に対してもかゆいと感じてしまう体質などが合わさった疾患です。

 赤くなったり、盛り上がったり、かゆくて引っかくので傷になってじゅくじゅくしたりします。こういう状態を湿疹(図3)といいますが、それが体質のために慢性化してしまうのがアトピー性皮膚炎です。

 湿疹=アトピー性皮膚炎ではなく、湿疹もアトピー性皮膚炎の症状の一つです。湿疹の原因はたくさんあります。例えば、洗剤かぶれ、金属かぶれ、などです。冬場に一番多い湿疹の原因は皮膚の乾燥になります。

 大切なのは、湿疹になる前に乾燥肌に対して適切なスキンケアをするということです。


【図3】湿疹


【Q. 乾燥から肌を守るにはどうしたらいいの?】A. 入浴後なるべく早く保湿剤を
◎保湿の継続で皮膚の水分量がアップ
〜私のデータから〜
 【図4】は私の皮膚の水分量と水分蒸散量を測ったデータです。乳液でもクリームでも2カ月間継続して保湿したところ、皮膚の水分量がアップして、水分が蒸発してしまう量が減っています。
 面白いことに塗っていない背中も改善しています。これは全身的に皮膚が良い状態になるためだと考えられます。

 風呂上がりに軽くバスタオルで水をふき取った直後、まだ少し水分があるような状態のときに保湿剤を塗りましょう。塗るタイミングは早ければ早いほどいいです。

 お風呂に入っている間はお湯に漬かっているので皮膚が保湿されたような状態になっていますが、湯から上がると皮膚の角質からみるみる水分が蒸発し、乾燥が進みます。大人であれば、自分でこういったことを意識して保湿剤を塗ればよいのですが、子どもは大人が言わないと保湿剤をすすんで塗ることはありません。

 先に子どもの皮膚は意外と皮脂の分泌が少なく乾燥していると説明しました。湿疹にならないよう皮膚を乾燥から守るために、しっかりと保湿剤を塗ることが、大人も子どもも大切です。

 子どもに保湿剤を塗る量や塗り方は、子ども自身の好みで決めていいと思います。むしろ、嫌がらずに継続できることの方が大事です。もし乾燥が治っていなければ、保湿剤の量を増やして様子を見ましょう。塗りすぎて悪いことは何もありません。ただまれに、ワセリンなどベタ付く感じの保湿剤が嫌いな子もいます。そういう子にはクリームなど質感が違う保湿剤を試してみるといいかもしれません。


【Q. 何度も保湿剤を塗っていいの?】A. 自分に合う保湿剤であればOK 湿疹の治療薬は別

 保湿剤には薬局で買えるものと、医師に処方してもらう医薬品とがありますが、自分に合う保湿剤であれば1日に何度塗ってもかまいません。

 塗り薬の中で、湿疹の治療薬と保湿剤は分けて考える必要があります。湿疹の塗り薬には1日1回だけと指定されているものが多く、きちんと守る必要があります。

 今、新型コロナウイルス対策などで手洗いがとても重要ですが、洗えば洗うほど皮脂が失われて皮膚は乾燥し、手荒れの原因になります。乾燥しているなら1日何回でも保湿剤を塗りましょう。

 保湿をしていたにもかかわらず湿疹になってしまった場合は、皮膚科のクリニックの受診をお勧めします。湿疹をこじらせて慢性化させないために、早めの治療が必要です。


執筆者

熊本大学病院
皮膚科
福島 聡 教授

医学博士
・皮膚科専門医
・アレルギー専門医 指導医
・皮膚悪性腫瘍指導専門医
・がん治療認定医
・免疫療法認定医