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「あれんじ」 2021月12月4日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第98回】子どもの「成長」を感じながら

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第98回】

【第98回】子どもの「成長」を感じながら
熊本大学病院 小児科
医師 藤山 菜摘

 私はまだ駆け出しの小児科医です。しかし、その中でも多くの子どもたちと出会ってきました。

 病院に連れてこられた子どもたちは最初、ぐったりして不機嫌で、医療者の顔を見るだけで嫌がって泣いてしまったり、薬を全く飲んでくれなかったりします。

 しかし、良くなるにつれて笑顔が戻ってきて、自分からおしゃべりをしてくれるようになります。薬が飲めるようになったり、検査もじっとして受けられるようになったりします。

 「笑顔が戻ってきましたね」「上手に検査できましたね」。そんなことは当たり前の話…と思われるかもしれませんが、私にとっては大事な「所見」の一つとなっています。

 子どもたちはとても正直です。いろんなことを感じ取り、そしてそれに応えてくれると感じています。だから、小さな子にも、薬や注射が必要なことをちゃんと伝えるように心掛けています。

 ただ、それでも無理強いしないといけない場合もありますが、できたときにはたくさん褒めてあげるよう心掛けています。お母さんに抱っこされて泣きながらされていた注射も、そのうちに一人で座ってできるようになるなど、さまざまな成長の姿を見せてくれます。

 私が出会えるのは子どもたちの人生の中の短期間でしかありませんが、その中でもそれぞれの成長を実感させられる日々です。それを感じながら私も笑顔がこぼれ、仕事のエネルギーとなっています。それがまた子どもたちの安心につながる連鎖となるといいなと思います。