熊本大学病院
小児外科・移植外科
助教 磯野 香織
【腹部膨満(ぼうまん)や便秘などの症状が】
ヒルシュスプルング病は、おなかの張りが強い、嘔吐(おうと)、排便不良などの症状がきっかけで小児外科に紹介され、新生児期〜乳児期に診断されることが多い病気です。
腸組織の中で、その動きを調整する神経節細胞が先天的に欠如するためぜん動などの腸の動きが悪く、腸閉塞や重い便秘が起きます。神経節細胞のない腸が短い場合は、症状が軽いために便秘として治療され、幼児期以降に診断がつくこともあります。
胎児期に消化管の神経節細胞が食道から肛門に向かって分布する過程において、分布が途中で停止することが病因とされ、神経節細胞のない腸が肛門から口側に向かって連続して存在することが特徴です。
神経節細胞のない腸の範囲は、この病気の約8割が短域型(肛門から直腸を経てS状結腸まで)、約2割が長域型 (全大腸、もしくは小腸にまで及ぶ) といわれています。
【専門的な検査のうえ診断】
診断には、注腸造影検査、直腸肛門内圧検査、直腸粘膜生検などの専門的な検査が必要です。
治療としては手術を行います。排便不良により腸炎を起こし、命に関わる重篤な状態になる危険性があるため、浣腸(かんちょう)などを使用してしっかりと排便管理を行うことが重要です。手術では神経節細胞のない腸を切り取り、神経節細胞のある正常な腸を肛門とつなぎます。腹腔鏡手術や、経肛門的手術がよく行われています。
手術後も便秘や腸炎を起こすことがあるため、長期的に小児外科の外来で経過観察を行う必要があります。 |