【元気の処方箋】
正しい知識・迅速な対応を! 大動脈解離
時に突然死の恐れもある「大動脈解離」。前触れがないだけに、発症の原因や仕組みを知り、予防や必要な対処を知っておくことが大事です。今回は、大動脈解離の原因や症状、治療法などについてお伝えします。(編集=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ) |
【はじめに】突然死、心不全や脳梗塞の原因に |
大動脈は心臓から全身に血液を送る役割をしており、体の中心を走行しています。 |
【原因と症状】大動脈壁の内膜の傷と中膜の劣化 高血圧、動脈硬化などが原因 |
【図1】大動脈解離の図解
血管は断面にすると3層の膜で構成されており、それぞれ内膜・中膜・外膜と呼びます。高血圧・動脈硬化・喫煙・ストレスなどが原因となって、大動脈の内膜に傷が入ります。その亀裂が大きいとそこから血液が流れ込み、その力で中膜の内部が裂け始めます。 |
前兆なく突然襲う激痛 すぐに救急車を |
症状としては亀裂が入った部分に激しい痛みが起こります。解離の進展に伴い、激しい痛みも移動していきます。典型的なのは、胸の前側や裏側に起きる激痛です。 |
【診断】確定診断は造影剤を使用したCT検査で |
【図2】大動脈解離のCT画像
突然発症し移動する特徴的な激しい痛みが胸や背中にあると大動脈解離の診断は容易ですが、そうでない場合もあります。 |
エコー検査やドップラー検査でも |
CT以外にもエコー検査で心臓の機能や弁の状態を観察したり、血液のたまりがないかを診断したりします。また、上下肢の血圧測定を行い左右差などがないかを観察したり、頸動脈や腹部内臓の血流を超音波によるドップラー検査で観察したりすることで全身の血流状態を診察します。 |
【治療】A型は緊急手術で人工血管に |
【図3】大動脈解離の分類
大動脈解離はA型とB型に分類され、心臓の近くの上行大動脈が解離しているとA型、上行大動脈が解離していないとB型と呼びます(図3)。 |
B型は絶対安静で、まず保存的治療を |
B型大動脈解離では安静にして血圧を下げる点滴や痛みを和らげる治療を行って経過観察を行います。B型大動脈解離でも、腹部内臓の血流障害があったり足の血流不良があったりすれば手術を行うこともあります。 |
【おわりに】生活習慣病の治療や減塩、禁煙などで予防を |
治療法が確立していても、できれば予防したいものです。大動脈解離にならないためには、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の治療と、日頃からの減塩、禁煙、ストレスの改善が大変重要です。 |
執筆者 |
熊本大学病院 |