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「あれんじ」 2021年11月6日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第97回】「おくすり手帳」

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第97回】

【第97回】「おくすり手帳」
医療法人創起会 くまもと森都総合病院
薬剤部 部長 森岡 淳子

 多くの方にお持ちいただいている「おくすり手帳」。単に、薬の名前が印字されているシールを貼る手帳と思っておられる方も多いかもしれません。

 以前、夜間の救急に「手指が震える」と訴える90代の女性が来院されました。服用中の薬の影響を調べるよう医師から依頼があり、持参された「おくすり手帳」を確認しました。すると、高齢により腎臓の機能が低下しているにもかかわらず、ある抗菌剤を成人量で服用していることが分かり、それによって震えが起きている可能性を医師に伝えました。その薬を中止後、症状が改善し無事退院されたという経験をしました。

 「おくすり手帳」は「薬の履歴書」です。他院での新しい薬との飲み合わせの確認など、大切な情報源となります。高齢社会の現在、多くの薬を併用する「ポリファーマシー」が、時に副作用の原因となると報告されています。「おくすり手帳」を医療機関で提示していただき、薬剤師が確認することで、事前に副作用などを回避することができます。

 また、災害時にも「おくすり手帳」が大変役に立ちます。2016年の熊本地震の時も、避難所などで薬を処方する際に利用されました。

 本来「おくすり手帳」は、薬を服用した時の体調の変化などを「ご自身で記載」していただく目的で作られたものです。ただシールを貼るだけでなく、皆さんの自由な発想で手帳を活用してください。そのお手伝いを薬剤師に任せていただけるよう、頑張りたいと思います。