熊本大学大学院生命科学研究部
小児科学講座
准教授 松本 志郎
【7歳児の10%程度】
5歳過ぎのお子さんに1週間のうち2、3回、睡眠中のおもらしが3カ月以上続く場合を「夜尿症」といいます。男の子に多く、7歳児の10%程度が夜尿症とされ、年間約15%ずつ自然治癒し、ほぼ全例が治るとされています。
尿をためる膀胱(ぼうこう)が小さい、あるいは尿の量が多いなど、子どもの未熟性が原因であるため、成長に伴って改善することが期待できます。
以前は経過を見るだけでしたが、夜尿症の5%程度の方に何らかの病気(内分泌系、泌尿器系や神経系)があること、まれですが成人まで治らない場合があること、また、夜尿症によって自信を持てなくなっている子どもが多いことが報告され、最近では早めの検査と治療が勧められています。
【効果的なアラーム療法】
治療は、生活指導(夕方以降の水分の制限)、飲み薬(尿量を減らす薬、膀胱の大きさを増す薬など)、アラーム療法(後述)が行われています。以前行われていた「夜中に定期的に起こして排尿させる」治療は、現在では行わない方が良いとされています。
アラーム療法は、尿の漏れ始めを察知して音や振動で子どもを起こす専用の機械を使用します。早ければ1週間で効果が出て、3カ月の治療での有効率は6割と、効果的です。昼間に尿を我慢して膀胱を大きくするトレーニングなども試されます。
このような治療は、子どもたちが自信を取り戻すきっかけにもなっていることが報告されています。
ご両親のどちらかに夜尿症があった場合、40%のお子さんに夜尿症が起こるとされています。このような場合は、親が自分の経験を話すことも良いでしょう。日頃元気でも人知れず悩んでいる場合も少なくありません。まずは、かかりつけの小児科(あるいは小児泌尿器科)の医師に相談されることをお勧めします。 |