【元気の処方箋】
適切な治療で治る!骨盤臓器脱
「骨盤臓器脱」という病気をご存じでしょうか。女性にとって気になる疾患だといえます。今回は、骨盤臓器脱の原因や症状、治療方法などについてお伝えします。(編集=坂本ミオ) |
【はじめに】いくつかの疾患の総称 |
骨盤臓器脱は、膀胱瘤(ぼうこうりゅう)、子宮脱、直腸瘤、腟(ちつ)断端脱など骨盤内の臓器が腟壁とともに腟から脱出してくる疾患の総称です(図1)。 |
【原因】出産や肥満、加齢などが原因や悪化の要因に |
骨盤は仙骨、腸骨、恥骨など数種類の骨で形成されており、骨盤底を形成しているのは筋肉、靱帯(じんたい)、結合織(けつごうしき)などが層状に重なってできたハンモック状の軟組織です。骨盤底を骨盤底筋群と呼ぶこともあります。 |
【症状】違和感や排せつ障害など症状があれば受診を |
【表1】
骨盤臓器脱の初期は、子宮や膀胱などの「下垂感」や「股に何かが挟まる感じ」といった症状です。症状が進む(下垂が悪化する)と、脱出した臓器が戻らなくなる、膀胱瘤や子宮脱であれば尿が出にくくなる、直腸瘤であれば便を出しづらくなる、といった排せつ障害も来します。脱出したものを自分で腟の中に押し込んで排せつしている人もいます。 |
【診断】さまざまな検査で的確に診断 治療方針の決定へ |
【図2】
骨盤臓器脱は泌尿器科と婦人科の境界領域であり、泌尿器科もしくは婦人科で診断を受けます。どの臓器がどの程度下がっているのかを的確に診断することが治療方針を決定する上で重要です。 |
【治療】根本的治療は外科的治療に 総合的な判断を |
【表2】各術式の比較
保存的治療には、ペッサリーリングやサポート下着で骨盤臓器脱の脱出を抑えるといった方法があります。初期であれば、骨盤底筋体操で進行を抑えることも可能です。 |
【図3】TVM-A
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【おわりに】一人で悩まず、相談を |
骨盤臓器脱は身近な病気にもかかわらず、相談しにくい、誰に相談していいのか分からない、などの理由で一人で悩んでいる方が多いようです。 |
執筆者 |
熊本大学病院泌尿器科 |