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「あれんじ」 2021年8月7日号

【元気!の処方箋】
理解を深めよう 性の多様性と性同一性障害

 最近、LGBT(エルジービーティー)やLGBTQ+(エルジービーティーキュープラス)という言葉を見たり聞いたりする機会が増えています。今回は、それらが表す性の多様性と性同一性障害についてお伝えします。
(編集=坂本ミオ)

【はじめに】性の多様性を尊重

 LGBTという言葉が、性の多様性の尊重、性的マイノリティー(少数者)の尊重の動きとして語られ、ニュースや新聞などで目にすることが多くなってきています。

 背景には、個人の性は個人に属するもので、「社会や制度、医療や家族から押しつけられるものではない」という認識の高まりがあります。


【性の多様性とは】
【図1】性を構成する要素

男性・女性に二分されるだけのものではない性

 性は、生物学的性(性器、染色体、ホルモンなどの身体的性別)だけでなく、性的指向(恋愛感情や性的な関心の対象がどの性別に向くか)、性自認(自分が自分をどの性別と認識するか、また認識しない/分からない/どちらも認識する、など含む)、性役割(服装、しぐさ、など普段のふるまいをどの性別でするか)など、いくつかの要素から構成されます(図1)。

 そして、個人の性が、男性・女性に二分されるだけのものでなく、これらの要素それぞれにおいて男性・女性の強弱の組み合わせで成り立つことから、性の多様性が生じます。


【図2】性的マイノリティーを表す言葉

総称としてのLGBT多様性を表す他の呼び方も


 LGBTは、性の多様性の一群として存在するレズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーと呼ばれる人々の頭文字を取ったものです(図2)。

 そのため、LGBTは医学用語ではなく、性的マイノリティーの人たちの総称を表す言葉となります。ただ、性には、図にあげた分類だけでなく、もっと多様性があり、それらを含めた呼び方(LGBTQ+や、図1の性的指向、性自認、性役割の英語表記の大文字部分をとったSOGI(ソジ)やSOGIE(ソジー)など)の提唱もなされています。


【性の多様性と医療】

精神医学的評価から支援、対応へ

 性の多様性と医療については、2つの関わりが考えられます。
 1つは、性的マイノリティーとして差別をされたり、孤独感を感じたりすることにより、精神的な不調が見られるようなことがあれば、精神医学的評価やその対応がなされます。

 もう1つは、身体的性別と性自認が一致していないもののうち、苦痛を感じ、生活に支障があることで、精神医学的支援を要する場合、また、本人が身体的治療を強く求め、かつ医学的にもそれが必要な場合に限って日本では、性同一性障害という医学概念での対応になります。


性自認の判定と診断

 医療機関では、性自認の判定として、詳細な養育歴、生活歴、性行動歴を聴取し、自らの性別に対する持続的な違和感・不快感、反対の性別に対する強く持続的な一体感、反対の性別の役割を求める気持ちなど性別違和の実態を明らかにしていきます。続いて身体的性別の判定(染色体検査、性ホルモン検査、身体診察)が行われます。

 そして、性自認と身体的性別が一致しないことが明らかとなれば、これを性同一性障害と診断します。

 世界的に見ると、性同一性障害という概念から、「性別違和」(DSM―5 ※1)や「性別不合」(ICD―11 ※2)、という医学概念が用いられる流れがあり、特にICD―11では性別不合をこれまでの「精神および行動の障害」の分類ではなく、「性の健康に関する状態」に分類すると発表されています。

※1/DSM―5:精神障害の診断・統計マニュアル第5版
※2/ICD―11:世界保健機構の国際疾病分類第11版


【治療について】
【図3】性同一性障害への精神医学的支援

本人の要望などに合わせ性同一性障害に精神医学的支援

 性同一性障害の有無に関わらず、適応障害、抑うつ、不安、その他の精神保健の問題があれば、それに応じた治療が行われます。
 性同一性障害への精神医学的支援としては、精神的サポート、カムアウトの検討、実生活経験の検討・サポート、精神的安定の確認を行います
(図3)。
 これらの対応については、本人の要望や適応能力に合わせながら進めていきます。

身体的治療の選択は意志を尊重しながら慎重に

 前述の治療を継続した後、本人が、身体的治療(ホルモン療法、性別適合手術など)の希望があれば、医療チーム(精神科医、形成外科医、泌尿器科医、産婦人科医などによって構成)が身体的治療に移行する条件が満たされるかどうかについて判断します。

 治療の選択については、治療後の予測し得る結果と限界やリスクについて十分な情報の提供を行い、本人の意志を尊重しながら、慎重に進めます。


おわりに

身体的・心理的・社会的な健康の改善、生活のしやすさに

 個人の性が、個人に属するものという認識を踏まえると、そのままの形で受け入れていく、その人の人格全体の大事な部分として向き合っていくことが、性の多様性を認めやすくなるのではないかと思います。

 そしてそのことが、医療や福祉などの援助がより少ないかたちで、性的マイノリティーの皆さんの身体的・心理的・社会的な健康の改善、生活のしやすさにつながっていくのではないかと考えます。


執筆者

熊本学園大学 社会福祉学部福祉環境学科
城野 匡教授 
博士(医学)

・日本精神神経学会専門医、指導医
・日本老年精神医学会専門医
・子どものこころ専門医