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「あれんじ」 2021年6月5日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第94回】「いらいらしたらぎゅっとしよう」

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第94回】

【第94回】「いらいらしたらぎゅっとしよう」
熊本大学病院 
小児科
医師 
今村 紘子

 私は病院の新生児集中治療室(NICU)に勤務し、毎日多くの生まれたばかりの赤ちゃんの診療に当たっています。また、家では1歳児を育てる母親です。

 医師になりたての頃は一つ一つに自信が持てず、何度も先輩に助言をもらい教科書を何冊も読んで、どうにか診療をしていました。それが年数を重ねると、医師としてできることが増え、より良い治療ができるようになってきた気になります。

 ですが、私がどんなに頑張って診療に当たっても眉間にシワを寄せている赤ちゃんがいます。そこにお母さんが近づいて、触って、声をかけるだけで赤ちゃんはとても穏やかな良い表情になるのです。

 安定しなかった数値も落ち着くという場面は数え切れないくらいありました。そして、最初は心配でこわばっていた表情のお母さんも穏やかな表情になります。

 昔は不思議だなあとしか思っていませんでしたが、実際に自分が母となり、子どもに触れると不思議ととても温かく安らかな気持ちになることに気が付きました。そしてそれを反映するように子どももご機嫌になります。

 ああ、あの不思議な現象はこれだったのかと思いました。触れるだけでお互いの安らぎになる、母と子の不思議なつながりを職場でも自宅でも実感するこの頃です。

 いたずら盛りで腹が立つことも多い毎日ですが、いらいらしたときほどぎゅっと抱きしめてあげようと思います。できるかどうか分かりませんが。