【元気!の処方箋】
予防や治療の理解につなげたい がんの基礎知識
日本では今、2人に1人ががんになるといわれています。さまざまな臓器で見られ、それぞれに特徴がありますが、そもそも「がん」とはどういう病気でしょうか。今回は、発症や進行の仕組み、進歩する治療法などについてお伝えします。(編集=坂本ミオ) |
【はじめに】「がん」を総合的な観点で |
胃がんや肺がん、乳がん、大腸がんなど、多くの臓器に「がん」という病気ができます。白血病やリンパ腫も血液の「がん」です。これまでこのコーナーでは、それぞれの「がん」についての予防や検査、治療方法などを紹介してきました。 |
【がん細胞とは?】遺伝子のエラーから異常な速度で細胞増殖 |
私たちの体は60兆個もの細胞から成り立っています。細胞の寿命はさまざまですが、常に新しい細胞が生まれて古い細胞が死ぬというサイクルを繰り返しています。 |
同じ臓器のがんでも種類が異なる場合も |
【図1】がん細胞が発生して大きくなるまでの過程
前がん病変/早期がん/進行がんという段階があります 同じ臓器であってもがんの種類によって治療法などが異なる場合もあります。例えば、肺がんでは扁平上皮がんや腺がん、小細胞がんなど複数の種類があり、それぞれのがん細胞の性質が違うため治療法が異なります。 |
【図2】正常からがんに変化していく過程(大腸)
注:医療機関では病理診断科に所属する「病理医」が病変部位を実際に顕微鏡で観察し、その性質や進展の程度を判定する役割を担っています。 |
【さまざまな臓器のがんと症状】無症状から多様な症状まで |
基本的に全ての臓器にがん細胞が発生しますが、その頻度はさまざまです。現在は、胃・肺・乳腺・大腸に発生する頻度が高いことはよく知られています。 |
【「がん」に関わる細胞たち】がん細胞だけではない、がん病変 |
がんと診断された場合、CTやMRI画像、内視鏡画像などで、初めてがんの病変を認識されると思います。 |
【新しいがん治療】「分子標的薬」などが治療効果を発揮 |
がん治療に用いる薬剤は、がん細胞の増殖を阻害するものが主流です。そのような薬剤は新しい正常細胞が生まれるのも阻害するので、さまざまな副作用があります。そのため、がん細胞だけを標的とする「分子標的薬」の開発が進み、その種類が徐々に増え、副作用の少ないがん治療につながっています。 |
おわりに 治療しながら社会生活を送ることも可能に |
現在は2人に1人が生涯のうちに「がん」に一度は罹患(りかん)するといわれています。最近は治療方法が発達したことから、「がん」を適切に治療しながらも社会生活を送ることが可能になってきました。 |
執筆者 |
熊本大学大学院生命科学研究部
細胞病理学講座 菰原 義弘 教授 ・病理専門医 ・日本癌学会評議員 ・日本病理学会評議員 |