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「あれんじ」 2021年1月9日号

【元気!の処方箋】
適切な診断を受け、治療・運動を パーキンソン病

 高齢化が進むとともに増えるだろうといわれるパーキンソン病。体の動かしにくさなどが、日常生活に支障を来すことが心配されます。今回は、パーキンソン病の症状や診断、治療法などについてお伝えします。(編集=坂本ミオ)

【はじめに】日本で約20万人 今後も増加が予測される疾患

 パーキンソン病は、手が震え、体が硬く動きにくくなるとともに、転びやすくなる神経の病気です。また、物忘れ、うつ、便秘、睡眠障害、嗅覚障害などとも関連しています。

 現在、日本で約20万人の方が患っていると考えられており、高齢社会のさらなる進展によって今後も増えると予測されています。

 この病気は、専門医のもと、適切に薬を使用することで症状を和らげることができます。また、適切な治療と運動で体を良い状態に保つことが重要です。

 類似の症状が出るためにパーキンソン症候群と名付けられているなどの別の病気も数多くありますので、まずは適切な診断を受ける必要があります。


【原因と症状】神経細胞にたまるタンパク質のゴミが関与か
【図1】パーキンソン病の主な運動症状

 英国の医師であるジェームス・パーキンソン氏が、「振戦麻痺」と名付けて1817年に報告した病気が後にパーキンソン病と呼ばれるようになりました。

 「振戦麻痺」の名の通り「振戦(震え)」や「麻痺(体の動かしにくさ)」を認めます【図1】。

 顕微鏡で脳を詳しく調べると、神経細胞の中に特徴的な小さな球状の異物である「レビー小体」を認め、神経細胞が減っています【図2】。

 この「レビー小体」をさらに詳しく調べると、タンパク質の一種であるアルファ‐シヌクレインなどが変性して固まった「タンパク質のゴミ」が見つかります。すなわち「タンパク質のゴミ(レビー小体)」が神経細胞にたまることが、パーキンソン病に大きく関与していると考えられています。

 なぜ、「タンパク質のゴミ(レビー小体)」が神経細胞にたまるのか根本的な原因は分かっていませんが、加齢などさまざまなことが影響していると思われます。


震えや体の動かしにくさ物忘れや注意力の低下なども
【図2】神経細胞にたまる「タンパク質のゴミ(レビー小体)」

 特に「ドパミン」をつくる脳神経細胞が集まっている中脳の黒質と呼ばれる部位に「タンパク質のゴミ(レビー小体)」ができやすく、その結果、神経の活動に重要な物質である「ドパミン」が減少するために、震えや体の動かしにくさが生じます。そこで、「ドパミン」を薬で補充すると症状を和らげることができます。

 しかし、「タンパク質のゴミ(レビー小体)」を減らすことは難しく、病気の進行とともに徐々に脳全体に広がります。いろいろな神経細胞が侵されると、物忘れや注意力の低下、錯覚、幻覚、睡眠障害、うつ症状、強い立ちくらみ、失神、言葉の出にくさ、表情の乏しさ、誤嚥、歩行時のすくみ、転倒、腰曲がり、痛みなどさまざまな症状が現れるようになります。

 パーキンソン病はゆっくり進むことが多いため、適切な治療を受ければ寿命にはあまり影響しないといわれています。


【診断】診察、検査などで確認 診断が難しい場合は経過観察も

 パーキンソン病に特徴的な症状があるか、問診を含む診察により確認します。嗅覚障害の有無も診断の参考になります。心臓の交感神経の機能低下を評価するために「MIBG心筋交感神経シンチグラフィ」という検査が実施される場合があります。

 パーキンソン病の場合はドパミン補充療法により症状が改善することが多いため、パーキンソン病の疑いが強い場合はまずドパミン補充療法を行い、治療効果があればパーキンソン病と診断されることも多くあります(治療的診断と呼ばれます)。一般的にパーキンソン症候群など他の神経難病や脳梗塞、正常圧水頭症、本態性振戦では、ドパミン補充療法の治療効果は乏しいからです。

 専門医が診察し、いろいろな検査をしても、初期にはパーキンソン病の診断が難しい場合があります。その際は注意深い経過観察が必要です。


症状が似ている病気も 区別に注意が必要

 【表1】に区別すべき主な病気を列記しました。問診を含む診察で、パーキンソン病の場合は認めることが少ない症状の有無を確認することが重要です。

 パーキンソン病とパーキンソン症候群の区別のため頭部MRI(もしくはCT)検
査を行います。パーキンソン病では頭部MRI(もしくはCT)検査で明らかな異常が認められない場合が多いのですが、パーキンソン症候群では、それぞれの病気に特徴的な所見が認められる場合があります。

 正常圧水頭症は手術で症状が改善する場合が多いため早期診断、早期治療が重要です。

 また、さまざまな薬剤の副作用でパーキンソン病のような症状が現れること(薬剤性パーキンソニズム)があり、注意が必要です。

【表1】パーキンソン病と間違われやすい病気
◎脳血管性パーキンソニズム(脳梗塞)
◎正常圧水頭症
◎薬剤性パーキンソニズム(副作用)
◎本態性振戦
◎アルツハイマー病
◎うつ病
◎神経難病
 多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症など


【治療】複数ある飲み薬や貼り薬 体調に合わせて調整を

 生活に支障のある体の動かしにくさに対しては、薬によるドパミン補充療法などが治療の主役となります。現在、パーキンソン病に対して複数の飲み薬や貼り薬などが使用できますので、専門医にご相談ください。ただし、薬が効きやすい症状と効きにくい症状があります。また、同じ薬を使用していても病気の進行とともに薬が効きにくくなり、副作用が出やすくなる場合もありますので、体調に合わせて薬を調整します。

 幻覚、物忘れ、立ちくらみ、便秘、頻尿などに対しては対症療法が行われます。

 幻覚など精神症状が強い場合はパーキンソン病の薬を減量することがあります。急に薬を中止すると体が全く動かなくなり危険です。また決められた量より多く使用すると副作用が生じる場合があります。使用方法や時間を守ることが重要です。


リハビリ、適切な運動が重要 さまざまな治療法が研究中

 薬に加え、リハビリを行い適切な運動を行うことが良い状態を維持するために極めて重要です。

 いくつかの条件が満たされた場合に手術(脳深部刺激療法など)が行われることがあります。まだ研究段階ですが、「ドパミン」を産生する細胞を移植する治療や、「タンパク質のゴミ(レビー小体)」を除去する治療など、さまざまな治療法が研究されています。


執筆いただいたのは
熊本大学大学院生命科学研究部 
脳神経内科学講座
教授
植田 光晴

・日本神経学会専門医、指導医、代議員
・日本アミロイドーシス学会 幹事