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「あれんじ」 2020年11月7日号

【元気の処方箋】
更年期は人生の折り返し 長い「ポスト更年期」を健やかに

 閉経前後に起きる「更年期障害」は知られるところですが、それ以後も、さまざまな病気や不調が起きます。寿命が長くなり、閉経後の人生が長くなった女性にとって、人生の後半をいかに健康に快適に過ごすかは大きなテーマです。そこで今回は、更年期が過ぎた後(=ポスト更年期)についてお伝えします。
(取材・文=坂本ミオ イラスト=はしもとあさこ)

【はじめに】
【図1】平均寿命と健康寿命の差(2016年)

伸びる閉経後の人生 平均寿命と健康寿命に差も

 厚生労働省によると、2019年の日本人女性の平均寿命は87・45歳。女性は7年連続で過去最高を更新しているそうです。しかし、閉経を迎える時期が以前と大きく変わったという話は聞きません。ということは、女性の人生は、閉経後がどんどん長くなっているということになります。

 日本人の閉経の平均年齢は50歳〜51歳といわれています。この閉経を挟んだ前後5年ずつの10年間を更年期といいます。この時期に起きる、女性ホルモンの急激な減少によるさまざまな不調「更年期障害」については、関心や理解が広がっていると感じます。

 では、更年期が過ぎてしまえば女性は快適に暮らせるのでしょうか。女性は平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)との差が大きいという現実があります(図1)。女性ホルモンの分泌がほぼなくなるポスト更年期の心身についてもっと知識を備えることで、折り返した後の人生をさらに健康に、豊かに、楽しみたいものです。


【貴久子先生に聞きました】Q.女性ホルモンが欠乏すると、 何が起きるのですか?
【図2】女性ホルモン(エストロゲン)の
さまざまな働き(子宮・卵巣・乳房に関わるもの以外)

A. 多彩な働きにブレーキ
閉経の随分後に症状が出ることも

 女性の体は、女性ホルモン(エストロゲン)とともに変化します。思春期に分泌が高まり、安定すると妊娠・出産に適した体になります。しかしそれ以外にも、記憶力・認知力、骨量の維持、動脈硬化の防止など、女性ホルモンは実に多彩な働きをしているのです(図2)。この分泌量が急激に減少する閉経前後には、頭痛や目まい、イライラ、集中力の低下といった症状や、のぼせ、ほてり、発汗、動悸、息切れなど、更年期障害と呼ばれる症状が出ます。

 更年期障害が一切なかったという方もいらっしゃいます。そういった方たちの中に、閉経から10年ほどたってから突然指や関節の痛みを訴えられ、その原因がエストロゲンの減少にあった、というケースも最近よく聞くようになりました。閉経後、時間がたって現れる症状もあるのです。


Q. 具体的にどんな病気になりやすいのでしょうか?
【図3】女性ホルモンによって起こりやすい症状

A. 骨粗しょう症だけでなく
脂質異常症や動脈硬化などにも注意を

 骨量が減って、骨粗しょう症になりやすくなることは広く知られてきたかと思います。(図2)で示した働きが期待できなくなるわけですから、それ以外にもさまざまな疾患や症状が現れます。(表)

 それぞれに、生活の質を大きく下げるものですし、動脈硬化性の疾患は命に関わります。

 それらが起きやすい年齢を示した(図3)で分かるように、60歳以降は多くの疾患や症状に気を付ける必要があります。

【表】
◎ 認知機能の低下
◎ 動脈硬化性疾患(心疾患、脳卒中)
◎ 尿失禁
◎ 脂質異常症
◎ 子宮脱
◎ 萎縮性膣炎
◎ 骨粗しょう症 など


Q. 予防や治療で改善することができますか?

A. ホルモン補充療法で改善 婦人科にかかりつけ医を持とう

 更年期障害の治療として、ホルモン補充療法があります。減少するエストロゲンを、経口薬や貼り薬、ジェルなどで補うものです。血液検査で分かる女性ホルモンの数値によって処方を検討します。一般的に、閉経後10年以上経過していない、また60歳以上でなければ安全に治療が開始できるとされています。

 治療により、ホットフラッシュや発汗などの症状の軽減、「何もする気が起きない」とふさぎがちだった方が、よく眠れるようになった、意欲が湧いてきたという声を聞きます。肌の色つやが良くなり、おしゃれにも気を使うようになるなど、生活面での良い循環も生まれるようです。

 一方で気を付けたいこともあります。産婦人科医に相談すると、治療方法や期間、注意事項など詳しい説明を受けることができます。

 日常生活においては、適度な運動やバランスの取れた食事なども大切です。

 そして「年を取ったら産婦人科は関係ない」と思わないでほしいと思います。女性ならではの体の変化に対応するため、婦人科にかかりつけ医を持つことをおすすめします。がん検診など命に関わることはもちろん、命には関わらなくても生活を快適にする方法があることを知ってほしいですね。


【終わりに】

自分を大切にすることが人生の充実、家族の幸せに

 女性のライフサイクルは大きく変化しています。寿命が延びるだけでなく、結婚や第1子出産の年齢も遅くなっています。また、結婚しない、結婚しても子どもを持たない選択をする人もいます。

 結婚・出産に関わらず、長く働き続ける女性も増えており、心身にかかる負担は質・量とも以前とは変わってきているのではないでしょうか。

 ポスト更年期は、女性ホルモンの欠乏だけでなく、蓄積した疲れやストレスが表に出てくる時期とも考えられます。

 だからこそ、まず自分を大切にする。それが人生の充実を生み、家族の幸せにもつながるのではないかと思います。

 ぜひ自分の心身の声に耳を傾けてみてください。


話を聞いたのは
うちの産婦人科院長
内野 貴久子 さん
・日本産科婦人科学会専門医
・母体保護法指定医