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「あれんじ」 2020年10月3日号

【四季の風】
【第51回 花野(はなの)】

【第51回 花野(はなの)】

花野(はなの)

 このコロナ禍ですが、心は遠く花野に遊ばせましょう。「花野」というと漠然としていますが、やや地味だが秋の草花が咲き乱れる高原のこと。ここには澄みわたる秋の空や雲、秋風、それに萩、薄(すすき)、女郎花(おみなえし)、撫子、桔梗、藤袴、葛の七草のほか吾亦紅(われもこう)、水引草、赤のまま、野菊。さらには薄の根元にひっそりと咲く南蛮煙管(ぎせる)(思草(おもいぐさ))まで、何でもそろっています。

 私のおすすめは、阿蘇の米塚下の公園の丘。毎年通って、秋草の名を覚えたのも、同行の人たちとの思い出が残るのも、この花野。ここは、心安らぐ吟行地です。

誰と来し彼と来し野の閑古鳥     岩岡中正

思ひ草思ひの丈(たけ)を沈めけり  小夏徳子

火の阿蘇に幻日かかる花野かな    野見山朱鳥

花野みなゆれ初めたる通り雨     高木晴子

 上の句で、閑古鳥とは郭公のこと。朱鳥の句には、絵画の才能と若々しいロマンがあります。高木晴子の句は、花野全体がひとつのいのちとなって揺れるさまをとらえています。