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「あれんじ」 2020年10月3日号

【元気の処方箋】
家族みんなでやってみよう! 休み時間エクササイズ@自宅で健やかに♪【後編】

 今回も9/5号に引き続き、自宅や屋内でできるエクササイズを紹介します。行動が制限されることの多いコロナ禍の中での生活では、大人も子どもも柔軟性や持久力の低下が心配です。家族で楽しみながら運動を習慣にしましょう。

【はじめに】運動をしないことが及ぼす影響
○白抜き数値は、県平均が全国平均を下回った数値。
○全国の値は、公立・国立・私立を含めた体力合計点の平均値
平成25年度〜令和元年度の全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果【体力合計点】 より

 熊本地震が起きた平成28年とその翌年、熊本県の子どもたちの体力合計点が下がりました。

 体力合計点とは、50メートル走や握力など8つの種目の数値を点数化したものです。

 左表で分かるように、中学2年の男子も女子も全国平均並みあるいは上だった数値が熊本地震の年に下がり、その翌年まで続いています。

 男子は、平成25、26年は全国平均とほぼ同程度で27年には全国平均を上回ったのですが、28年に下がり、29年は差を詰めたものの、全国平均より下でした。

 女子は、28年以外はすべて全国平均を上回っていますが、29年はわずか0・01点の差で、前年の地震の影響は否めません。

 全体に、全身持久力を見る20メートルシャトルランや筋持久力を測る上体起こし、さらに小学生では柔軟性の指標となる長座体前屈の数字が下がっていました。

 熊本地震の際の休校は1カ月ほどでした。それでもこのように体力が落ちてしまうのです。地震後、体育館やプールが使えなかったケースもあるでしょうが、運動をしないことが与える影響の大きさが伺えます。

 このような影響が子どもに見られたことは、大人にも同様の傾向があったと考えられます。


良い姿勢を保つ筋肉を鍛えよう!
「ストレッチと筋力トレーニングがミックスされたようなエクササイズが増えています。体をほぐしながら、決して無理をしないようにしましょう。」
【運動指導】
理学療法学科 
副学科長九州中央リハビリテーション学院
中山 貴文さん

 筋持久力は体力検査の上体起こしで測定されるので、この低下は腹筋力の低下を、柔軟性は長座体前屈で測定されるので、臀(でん)部・大腿(だいたい)部裏の筋の柔軟性の低下を意味します。これら2つの低下は、骨盤の後傾と背中の湾曲を反映したものとも考えられます。

 地震後は、家や避難所、車の中にいて運動ができなかったため、悪い椅座位(いざい)姿勢によってもたらされたのかもしれません。コロナ禍の中での生活も、体力のみならず、良い姿勢を保持するための体の機能低下が予想されます。そこで、良い姿勢を保持するための運動を紹介します。


【ジャックナイフストレッチ】5回×1セット できれば朝・昼・晩に

 ふくらはぎ、太ももの裏、お尻の筋肉を伸ばします。しゃがみ込むとかかとが浮いてしまう人は、かかとの下に雑誌やタオルなどを挟み込んで安定させて行いましょう。

@ 完全にしゃがみ込み、両手で後ろからかかとを握り、胸と太ももを密着させる。

A 密着させた胸と太ももが離れないように気を付けながら、徐々に膝を伸ばし、お尻を持ち上げる。太もも裏の筋肉が気持ちよく伸びたところで5秒くらい静止。

B いったんしゃがんで、ゆっくり立ち上がってリラックス。
※ Aの姿勢からいきなり頭を起こすと腰を傷める場合もあるので、注意を!


【ラットフライ】5回×1セット 1日2回程度

 背骨を伸ばし、背中と肩甲骨まわりの筋肉を鍛え、さらに腹部の筋肉を働かせることで、良い姿勢へとつなげるエクササイズです。

@うつぶせに寝て、腕は体の横に置いてリラックス。手のひらは下向き。

Aおへそを床面にしっかり付けて上体を起こし、肩甲骨を引き寄せるように腕を地面から持ち上げる。この時、親指が天井を向くように。このまま3秒間キープ。
※腰を傷めないために、肋骨(ろっこつ)の一番下くらいまでは床面に付けたままにしましょう。

B腕を横へ開いていく。
※ B以後の運動が難しい時は、@→Aを繰り返しましょう

C腕を耳の高さにし、バンザイの姿勢で3秒間キープ。この時も親指は天井に向いた状態。

D元の姿勢にゆっくり戻って、いったんリラックス。


【マウンテンクライマー】両脚×5回を20秒くらいで 少し休憩しながら3セット

 肩甲骨周囲と股関節に働きかけ、姿勢保持に関わる筋力と可動性を向上させます。運動に慣れ、スピードを上げられるようになると心肺機能の向上も図れます。

@ 腕立て伏せの姿勢を取る。体が一直線になるよう気を付ける。

A 片方の脚を浮かせ、膝を胸に近づけながら脚を曲げる。この時、足が床面に付かないように。

B いったんスタートの姿勢に戻って、反対側の脚も同様に行う。

【ポイント】
 スタートの姿勢の時も、脚を曲げて胸に近づける時も、頭、背中、お尻の3点が一直線になる姿勢をキープ! 背中が丸まらないように注意しましょう。


教えてくれたのは
熊本大学大学院教育学研究科 教授
熊本大学教育学部附属小学校 校長
博士(医学)

井福 裕俊 さん
・日本運動生理学会理事
・日本体力医学会理事
・日本生理学会評議員