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「あれんじ」 2020年8月1日号

【元気!の処方箋】
「見え方」に不自由しないため正しく知りたい緑内障

 気付かぬままに症状が進むという緑内障は、いかに早く発見して治療につなぐかが大事なポイントです。今回は、緑内障についてお伝えします。(編集=坂本ミオ)

【はじめに】緑内障は失明原因の第1位!

 近年の調査で、緑内障は日本人の後天性(生まれつきではないこと)失明原因の第1位であることが分かっています。

 その理由は、患者さんの数が多いこと、症状に気付きにくいこと、進行した視覚障害が元に戻らないこと、治療に反応しづらい場合があることなどと考えられています。

 治療すると見え方が改善する白内障に対して、名前はよく似ているのに、緑内障は全く違う性質を持った病気なのです。

 こういうと怖い病気に聞こえますが、きちんと診断、治療すると、生涯見え方に不自由せずに済む場合も少なくありません。まずは、どういう病気か、よく知ることが大事です。


【緑内障ってどんな病気?】眼圧が相対的に高いことで視神経が弱っていく
【図1】緑内障の原因
眼球の内張りをしている網膜で光を感知し、その信号を視神経が脳に伝えることで、モノが見える。緑内障は、この視神経が弱る病気であり、眼圧が視神経を弱らせる主な原因と考えられている。

 モノを見る仕組みでは、眼球の内張りをしている網膜で光を感知し、その信号を視神経が脳に伝えます。緑内障は、この視神経が弱る病気です。

 緑内障では、眼圧が視神経を弱らせる主な原因と考えられています。眼圧とは眼の内圧のことで、目の硬さと言い換えてもいいでしょう。正常な眼圧は10〜21ミリ Hg(私たちの血圧の10分の1程度)です。これを超えると、ほとんどの方で視神経が弱り、緑内障となります(図1)。

 眼圧は高ければ高いほど緑内障になりやすく、進むスピードも早くなります。一方で、正常眼圧緑内障という病型もあります。視神経が圧に弱いため正常な眼圧でも緑内障になってしまうのです。

 眼圧以外にも緑内障に影響することが想定される要因はありますが、治療効果のエビデンス(裏付け)があるのは現時点では眼圧下降のみです。


【眼圧が上がる原因や病型はさまざま】
【図2】緑内障の種類
隅角とは角膜と虹彩によって形成される角のこと。開放隅角と閉塞隅角のタイプがある。

 眼圧が上がる原因は、落屑(らくせつ)症候群、ぶどう膜炎、糖尿病網膜症といった目の病気に続発するものや、目の外傷によるもの、ステロイド薬によるものなど、さまざまです。

 これらの要因がなく、体質的なもので発症するタイプが原発性と言われるものです。

 原発性、続発性のいずれにも、開放隅角と閉塞(へいそく)隅角のタイプがあります(図2)。閉塞隅角のタイプは、安定剤など他の病気の内服薬で注意が必要な場合がありますので、眼科の主治医に確認しておきましょう。


【緑内障の症状】初期から中期は無症状が大半!
【図3】緑内障による見え方のイメージ

 多くの場合、緑内障は少しずつ進みます。視神経が弱り、視野の中で見えない部分が出てきますが、初期は中心からズレたところが障害されやすいことで視力は保たれます。さらに欠けた部分の視野を脳が補う機能もあって、ほとんどの方は気付かないことが特徴です(図3)。視野検査や眼底検査を行うと見つけることができます。眼圧が高い場合は眼圧検査でも見つかります。

 進行して視野の欠けた部分が広がると、かすんで見えたり、見えない部分があることに気付いたりしますが、問題はこれが治らないことです。

 緑内障で障害された視神経は再生しませんし、治療で入れ替えることもできません。したがって、早期発見、早期治療を行って、進行を遅くすること、今の見え方をできるだけ維持することが重要です。

 閉塞隅角緑内障や一部の続発性緑内障では急激に眼圧が上昇することがあり、この時は頭痛、吐き気、眼痛などを伴い、気付きやすいのですが、割合として多くはありません。


【緑内障の治療】眼圧を下降させ進行のスピードを遅くする

 まず、薬によって眼圧を下げますが、用いるのは基本的に目薬です。内服薬は副作用の問題から長期的に使用することには不向きです。

 目薬は正しく使うことが効果を出すために大事です。回数を守ることはもちろんですが、目薬容器の先端が眼の表面や皮膚に接触しないようにすること、薬が入ったらしばらく目を閉じておくこと、複数の目薬を使用する場合には間を5分ほど空けることなどに気を付けましょう。

 緑内障の目薬には多くの種類があり、それぞれ特徴が異なりますので、合わないようであれば替えてみることもできます。

 次にレーザー治療で眼圧を下げる方法があります。レーザー治療は手術と比較して安全な方法ですが、適応する病型や病期は限られます。

 また、眼圧下降効果とその持続期間は、手術にやや劣ります。


手術は進歩しているが、危険性もある

 緑内障の手術は、目の中に栄養を与える房水の排水量を増やすことにより眼圧を下げるために行います。

 排水量を増やす方法は大きく分けて2通りあり、1つは隅角から始まる元々の排水路を再開通させる方法です。近年は安全性が高く、短時間で終わる術式が普及し、当院でも以前よりも早く手術に踏み切ることが増えてきました。ただし、危険性がない手術はなく、全ての病型が対象となるわけではありません。

 もう1つは元々の排水路を諦め、バイパスを作る方法です。眼圧下降効果は最も強いのですが、非生理的な分、重症の合併症の確率が上がります。とはいえ、この方法でしか眼圧を下げられない症例もあり、当院では比較的件数が多い手術です。


【終わりに】定期的な検査と治療で見え方を維持しましょう!

 緑内障は正しく理解し、気長に付き合っていく必要のある病気です。

 治療によっていったん眼圧が下がっても、気付かない間に眼圧がまた上がり、視神経の障害が進んでしまう場合があります。

 症状がなく調子が良くても、定期的に通院して検査を受けておきましょう。


執筆いただいたのは
熊本大学大学院 生命科学研究部眼科学講座  
教授 井上 俊洋

・日本眼科学会眼科専門医
・日本緑内障学会
 評議員、理事
・日本小児眼科理事