あれんじのページ

「あれんじ」 2020年7月4日号

【四季の風】
第50回 昼寝

 もちろん昼寝は年中してもいいが、とくに暑くて体力が落ちる夏が多いので、夏の季語。「午睡」ともいい、昼寝している人を「昼寝人(ひるねびと)」といったり、目が覚めると「昼寝覚(ひるねざめ)」という。川崎展宏は「朝の寝覚めと違って、ちょっとはかない気分」というが、その通り。さらに、「三尺寝(さんじゃくね)」ともいうが、職人が三尺(約九〇センチ)ばかりの狭い仕事場で仮眠することからとも、日脚が三尺移る間を寝るのを許されるからだともいう。いずれにしても、味のあることばだ。

海を見てこれから昼寝するつもり  岩岡中正

昼寝児(ご)のさめて坐つて居りにけり  福田蓼汀(りょうてい)

三尺寝大きな山を引きよせて  黛(まゆずみ)執(しゅう)

 一句目は、海の見える避暑地へ着いた。先ず昼寝だという気分。二句目は、昼寝から覚めてしばらくボンヤリしている子。そのあどけないこと。三句目は、目の前に小さくなって寝ている人のその先の大きな山。昼寝人の安堵の姿。

はるかまで旅してゐたり昼寝覚  森 澄雄

 私の好きな句。中国の荘子の幻想の世界に遊ぶ作者。〈年過ぎてしばらく水尾(みお)のごときもの〉(澄雄)にも通じる、あわあわとした、「胡蝶の夢」の世界。