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「あれんじ」 2020年7月4日号

【元気!の処方箋】
救命効果が大きい!大腸がん検診

 早期の段階では自覚症状がほとんどないという大腸がん。それだけに検診で早めに見つけることが大事です。今回は、大腸がんと検診についてお伝えします。   (編集=坂本ミオ)

【はじめに】

命を救う可能性が高いがん検診

 がんは、心疾患、脳血管疾患とともに3大疾病の一つです。その中で、特に検診で皆さんの命を救う可能性が高いがんをご存じでしょうか。それは、大腸がん、子宮頸(けい)がん、乳がんです。

 今回は、その中の大腸がん検診について解説します。検診のメリット、デメリットを正しく理解して利用することが、検診の効果を最大化するコツともいえます。


【大腸がん検診】

●便潜血検査は集団検診や人間ドックでも

 検診には対策型検診(いわゆる集団検診)と任意型検診(人間ドック)があります。

 対策型検診では、毎年の便潜血検査が行われています。市町村が主体となり、自己負担金が300円から500円程度と比較的安価に、巡回肺がん検診場や医療機関で検診として受けることができます。※

 一方、任意型検診いわゆる人間ドックでは、便潜血検査単独、便潜血検査とS状結腸内視鏡検査、あるいは全大腸内視鏡検査、CTによる仮想内視鏡検査(いわゆるCTC検査)が、検診機関によって行われています。

 特に全大腸内視鏡検査、CTC検査は、精密検査に位置付けられ、便潜血検査陽性者の精密検査にも行われる検査です。これらの検査は、大腸がんなどの病気を疑う場合のみ保険が適用され、症状のない検診目的で、医療機関で行う場合は、保険の効かない自費となります。

※ 新型コロナウイルス感染拡大予防のため、一時的にがん検診を中止している市町村もあります。詳しくは、お住まいの市町村にご確認ください


【大腸がんの原因】
【図1】早期大腸がんと進行大腸がん

●短期間でポリープからがんになる場合も

 大腸がんは、大腸の内腔(くう)、粘膜から発生する腫瘍です。赤身肉や動物性脂肪と消化液の胆汁と腸内細菌の作用で発がん物質がつくられ、大腸粘膜面の細胞が繰り返しいくつかの遺伝子異常を起こすことで、がんになると考えられています(図1)。

 多くは大腸ポリープといわれる良性腫瘍が発生し、成長の後、がん化、いわゆる悪性腫瘍になると考えられています(図2)。

 2〜3oのポリープからがんに成長するまで平均14年くらいかかるという研究もありますが、遺伝子異常を起こす回数、どの遺伝子異常を起こすかに影響され、がんになるスピードに変化があることも予測されています。つまり、短期間でがんまで成長するポリープもあれば、10年以上大きくならない大腸ポリープもあります。

 大腸がんは、50歳から急激に増加します。これも遺伝子異常の蓄積期間と関連すると考えられます。


【図2】大腸ポリープから早期大腸がんへ


大腸がんによる死亡は、50年で8倍に急増 背景に高脂肪、高タンパクな食生活
【図3】大腸がん死亡数の推移

 赤身肉は、料理の過程(焼く、ハムなどへの加工)でも発がん物質ができるといわれています。肉は筋肉を維持するために、一定量の摂取が必要とされているので、適切なバランスが重要だと考えます。

 運動不足や糖尿病も大腸がん増加と関連しています。便秘との関連はありません。

 日本での大腸がん死亡数は、この50年で8倍に急増しています(図3)。世界でもトップレベルの増加率です。これは、高脂肪、高タンパク、低繊維食の欧米型食生活に変化したためといわれています。明治時代に日本から米国へ移民した人たちの間で30年後、大腸がんが急増したり、長寿県であった沖縄で中高年に大腸がんが急増していることも食事の影響と考えられています。

 一方、ベジタリアン(菜食主義の人)には大腸がんは少ないことも分かってきましたが、特に卵、乳製品や魚を食べるが、肉を食べないペスコベジタリアンは、大腸がんの発生が半分であることが分かりました。


【症状と便潜血検査の効用】
【図4】便潜血検査の方法

●進行しないと現れない症状 潜血を見つけて早期発見に

 大腸がんは、かなり進行した状態、進行がんにならなければ、症状はありません。

 進行大腸がんを疑う症状は、ここ最近の血便、便通の変化、便の細小化、体重減少、貧血などです。

 多めの血液で便器が赤くなるような血便、いわゆる顕性血液は、大腸がんではなく、痔からの出血のことが多いです。

 大腸がんでは、その表面が崩れて血液がにじみ出ることから便に混じります。一見見えない血液いわゆる潜血を発見することで、可能な限り早期の段階の大腸がんを発見するのが便潜血検査です(図4)。


●毎年かつ2日連続での検査で 検出率がアップ

 1回の便潜血検査で、進行大腸がんの8割、早期大腸がんの4割を検出するといわれています。従って、便潜血検査は、毎年かつ2日連続で検査をすることで、検出する確率が上がるのです。一方、がんに成長する前の大腸ポリープは表面が崩れていない場合は、検出できないことが多いのも事実です。

 つまり、便潜血検査は、安価で多集団の検査に向いていると同時に、ある程度進んだ大腸がんの検出に有用といえます。リンパ節などへの転移が起きた段階の大腸がんは、手術と同時に抗がん剤治療などが必要となり、社会復帰に長くかかる場合があります。そこで、人間ドックなどでは、便潜血検査と同時に、陰性であっても、5年に1回程度の全大腸内視鏡検査が勧められているのです。


【全大腸内視鏡の効用】

●将来の大腸がんの危険度を予測

 便潜血検査陽性者の全大腸内視鏡検査で、3%程度の方に大腸がんが発見されます。残りの方は、他の病気のほか、便秘、下痢、痔などの影響が考えられます。

 大腸がんを疑う症状のある方では、10%以上の確率で発見されます。便潜血検査陽性者の方は、保険適用になりますので、全大腸内視鏡検査をぜひお受けください。

 そこで大腸がんが発見されなかった方は、検査で発見されたポリープの状態で将来の大腸がん発生が予測できます。多発ポリープの方、大きなポリープ、異型度が高い、つまりがんになる前段階のポリープが発見された方は、将来、大腸がんになる確率が高く、要注意です。これらの方は、その後、医療機関での適正な経過観察が必要となります。


執筆いただいたのは
尾田胃腸内科・内科
院長
尾田 恭
・日本消化器内視鏡学会 指導医、評議員
・米国消化器内視鏡学会 専門医
・米国消化器病学会 専門医
・熊本大学消化器内科 臨床教授