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「あれんじ」 2020年6月6日号

【元気の処方箋】
適切な治療&生活習慣で症状の緩和を 乾癬(かんせん)

 皮膚から少し盛り上がった赤い発疹などの症状が見られる乾癬。皮膚症状は、見た目によるストレスも抱えがちです。今回は乾癬について、症状や治療法に加え、日常生活で気を付けたいことなどをお伝えします。(編集=坂本ミオ)

【はじめに】近年増加傾向にある皮膚の炎症性疾患

 乾癬は、慢性の経過をたどる皮膚の炎症性疾患です。「感染」と読みが同じため、誤解されるかもしれませんが、決してうつる皮膚疾患ではありません。

 日本の乾癬患者は現在、40〜50万人程度(人口の約0・3%)であり、近年増加傾向にあります。男女比は約2対1で男性に多く、20歳代と40〜50歳代に発症のピークがあります。


【症 状】9割は皮膚症状のみ 関節に痛みや腫れが出ることも
【図1】乾癬の皮膚症状

 典型的な皮膚症状として、紅斑(皮膚の炎症による赤み)、肥厚(皮膚の盛り上がり)、鱗屑(りんせつ=銀白色のカサブタのようなもの)があります(図1)。

 爪症状として、爪の凸凹、剥離(はがれやすくなる)、混濁(白く濁る)があります(図2)。


 また、皮膚のみならず関節や目に症状を起こすこともあります。関節(骨と骨の連結部)症状として、手先などの末梢関節の痛み、腫れ、変形な
どを起こすだけでなく、脊椎(背骨)などの体軸関節にも同様の症状を起こすこともあります。

 アキレス腱(けん)や足の裏などの腱が骨に付着する部位での炎症により、その周辺で痛みや腫れなどを起こします。

 患者さんによって、これらの症状の有無や重症度は異なります。病型として、乾癬の約9割は皮膚症状のみの尋常性乾癬です。その他に関節症状を伴う関節症性乾癬(乾癬性関節炎)、乾癬性紅皮症(乾癬が急激に悪くなり全身に紅斑が出現する)、膿疱(のうほう)性乾癬(皮膚表面の紅斑に膿を伴う)、滴状乾癬(小型の皮疹が全身に出現する)があります。


【図2】乾癬の爪症状


【原 因】免疫システムの過剰な反応が 皮膚や関節で炎症を
【図3】乾癬の病態

 発症の原因はまだ完全に解明されていませんが、最近の研究では、インターロイキン(IL)ー17、インターロイキン(IL)ー23、TNFーαなどのサイトカイン(細胞から細胞への情報伝達を起こす物質)による免疫システムの過剰な反応が、皮膚や関節で炎症を起こすと考えられています
(炎症により紅斑が生じます)。

 また、過剰な免疫反応により、皮膚の表皮細胞の異常な増殖が誘導され、乾癬の皮膚症状として肥厚、鱗屑が生じます(図3)。


【治 療】塗り薬や飲み薬、注射など 単独や併用で適切な治療を

 根本的な治療法はまだありませんが、治療(表)により皮疹や関節症状を緩和させることができます。

 同じ皮膚の状態でも患者さんの日常生活への影響は異なりますし、同一治療でも患者さんによって治療効果には差があります。担当医師とよく相談して、症状・治療効果・ライフスタイルに合わせ、これらの治療法を単独もしくは併用するなど適切な治療法を進めていくことが大切です。

◎塗り薬
 ステロイド外用薬、活性型ビタミンD外用薬、それらの配合薬
◎光線療法
 紫外線照射
◎飲み薬
 ビタミンA誘導体、免疫抑制剤、PDE4阻害薬
◎注射薬
 サイトカインを調節する点滴静脈注射、皮下注射


【気を付けたいこと】良い状態を保てるよう 悪化要因を知り、避けましょう

 日常の生活習慣により、乾癬の皮膚症状が悪化することが報告されています。治療とともに、悪化因子をできるだけ避けることが大切です。

◎ 食事と運動
 乾癬はメタボリックシンドローム(内臓肥満と高血圧、高血糖、脂質異常症が組み合わさり、心血管疾患や脳血管疾患になりやすい状態)と関連する疾患です。
 食事制限は必要ありませんが、バランスのよい食事や適度な運動が必要です。脂質・糖質の過剰な摂取に注意し、肉類や脂質が多い洋食より、魚類や野菜が多い和食をお勧めします。
 また、刺激が強いもの、熱いものなどにより、かゆみが誘発されることがありますので、トウガラシなどの刺激が強いものは控えたほうがよいです。

◎喫煙
 喫煙は、乾癬治療効果を弱める要因として報告されています。また乾癬の症状が重い方では、心筋梗塞や動脈硬化などの心血管疾患を発症しやすいことが報告されています。喫煙は心血管疾患のリスク因子でもありますので、可能であれば禁煙をお勧めします。

◎外的刺激・衣服
 乾癬の皮膚症状は、外的刺激により誘発されるケブネル現象というものがあります。皮膚への刺激を避けるために、皮膚をこする、無理に鱗屑をはがす、といったことがないように注意する必要があります。
 衣類に関しては、肌に刺激の少ない布地を選び、きつくない衣類を着用し、肌への刺激を避けましょう。

◎入浴
 毎日の入浴で、皮膚を清潔に保つ必要がありますが、熱い温度での入浴や長湯は、かゆみが増し、乾癬を悪化させます。ぬるま湯で長湯にならないようにしましょう。

◎ストレス発散
 見える部分に皮膚症状があるため、強いストレスを感じている場合もあると思います。そのストレスにより、さらに皮膚症状が悪化することもあります。またストレスによるうつ症状を、25%の乾癬患者さんが持っているとの報告もあります。治療を続け、症状が良くなっている状態を長く保つことが大切ですが、それと同時に自分なりにストレスをうまく発散させる必要があります。

◎感染症の予防
 免疫抑制剤や注射薬による乾癬治療を受けている患者さんでは、体の免疫機能が弱まり、感染症への抵抗力が下がる恐れがあります。日常的に手洗い・うがいを励行しましょう。
 また生ワクチンによる予防接種=風しん、おたふくかぜ、水痘(水ぼうそう)など=は、感染症を誘発する可能性があり接種できません。


執筆いただいたのは
熊本大学病院 皮膚科 
助教
梶原 一亨(かじはら いっこう)

・日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
・日本リウマチ学会リウマチ専門医・指導医
・日本がん認定医機構がん治療認定医