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「あれんじ」 2020年5月2日号

【元気の処方箋】
加齢に加え生活習慣も関連あり!? 前立腺肥大症

 年齢とともにトイレが近くなったと感じる男性にとって気になるのが前立腺肥大症ではないでしょうか。今回は、男性にしかない前立腺とその疾患についてお伝えします。

【はじめに】さまざまな排尿のトラブルが
【図1】

 前立腺は男性特有の臓器で、骨盤の中、膀胱(ぼうこう)と尿道の間にあります (図1)。前立腺液といわれる精液の一部を作ることで、精子に栄養を与えたり、保護したりする役割を果たしています。

 前立腺肥大症は良性疾患ですが、前立腺の過形成(過剰な細胞増殖が起こり、組織の体積が増加すること)により、さまざまな排尿のトラブルを起こすことがあります。一般的な成人男性であれば、前立腺の大きさは体積として20ml程度(くるみの大きさくらい)といわれていますが、前立腺肥大症では、100mlやそれ以上になる場合もあります。


【原因】性ホルモン環境の変化が関与

 前立腺肥大症の原因はまだはっきりと解明されてはいませんが、男性ホルモンなどの性ホルモン環境の変化が関与するといわれています。

 加齢は明らかな危険因子とされ、その他、遺伝的要因や肥満・高血圧・高血糖・脂質異常症・メタボリックシンドロームなどが前立腺肥大症と関連があるとされています。前立腺肥大症の症状を悪化させないためには、生活習慣を整えることも重要です。


【症状】頻尿や残尿感などに合併症が起こることも
【図2】、【表1】、【表2】

 前立腺は膀胱から尿道の間にあるので、前立腺肥大症では尿道が圧迫され狭くなることで症状が生じます(図2)。

 患者さんの訴えや症状としては、(表1)などがあります。

 またその他の合併症として、(表2)などがあります。

 前立腺肥大症でも、表1・2の症状がすべて起こるわけではなく、個人差があります。また前立腺が大きければ大きいほど、症状が出やすいかというと一概にそうとは言えません。


【検査・治療】検査で診断、必要に応じて治療を選択
【図3】、【図4】

◎検査
 よく行われる検査を以下に紹介します。症状などに応じて、その他の検査が追加されることがあります。

@自覚症状の評価
 症状問診票などを用いて、患者さんの症状の強さや、お困りの程度を確認

A直腸内指診
 肛門から直腸に指を入れて前立腺に触れることで、前立腺の大きさや形を評価する。前立腺がんがある場合には硬いものが触れることもあるため、前立腺肥大症以外の疾患を見つけるためにも必要(図3)

B尿検査
 尿路感染症や血尿の有無などを評価

C尿流測定
 専用のトイレに設置してある機械によって排尿時の勢い、排尿量、排尿時間などを測定し、排尿障害の程度を把握(図4)

D残尿測定
 排尿後にどのくらい膀胱に尿が残っているのかを測定

E前立腺超音波検査
 超音波検査で前立腺を観察し、前立腺の大きさを評価

F血清PSA(前立腺特異 抗原)測定
 PSAは前立腺から分泌されるタンパク質で、採血で測定することができる。前立腺がんのスクリーニング検査として有用。前立腺がん以外にも前立腺炎や前立 腺肥大症でも値が高くなることがある

 これらの検査で前立腺肥大症と診断された場合に、治療を検討します。


【検査・治療】検査で診断、必要に応じて治療を選択
【図5】

◎治療
 症状や合併症のない前立腺肥大症に関しては治療の必要はなく、生活指導や経過観察を行います。治療する場合は、大きく薬物治療と手術治療に分けられます。

【薬物治療】
 前立腺肥大症が尿の通過障害を引き起こす原因としては、(1)前立腺にある平滑筋という筋肉が収縮して尿道を圧迫する(2)大きくなった前立腺が物理的に尿道を圧迫する、があります。薬物療法として主に用いられるものとして、α₁受容体遮断薬、5α還元酵素阻害薬、PDE5阻害薬があります。

●α₁受容体遮断薬
 前立腺平滑筋に対する交感神経緊張状態を抑えることで、前立腺を弛緩させ、尿の通りをよくする(図5)

●5α還元酵素阻害薬
 前立腺細胞の増殖を抑制し、前立腺の体積を縮小させる(図5)

●PDE5阻害薬
 膀胱頸部(膀胱の出口)・尿道および前立腺の平滑筋を弛緩させる

【手術治療】
 薬物治療を行っても症状が改善されない場合は、手術治療が選択されることがあります。

●経尿道的前立腺切除術(TUR―P:TransurethralResection of Prostate)
 尿道から内視鏡を挿入し、内視鏡の先端についた切除ループに電流を流して、前立腺を削り内側からくりぬくような手術。前立腺肥大症に関しては、最も標準的な手術

●光選択式レーザー前立腺蒸散術(PVP:photoselective vaporization of the Prostate by KTP laser)
 尿道から内視鏡を挿入し、高出力のレーザーを照射して前立腺を蒸散させながら切除。手術時の出血のリスクが少ないという特徴がある


【終わりに】適切な治療でより良い暮らしを

 前立腺肥大症は良性疾患ですが、排尿機能を悪化させ、患者さんの生活の質(QOL)を低下させてしまうおそれがある疾患です。したがって、前立腺肥大症に対して適切な対応、治療を行うことは、皆さんの生活がより良くなることにつながると考えます。

 今回は男性特有の疾患を取り上げましたが、男女問わず尿のことでお困りの際は、お気軽に泌尿器科にご相談ください。


執筆いただいたのは

熊本大学病院 泌尿器科
特任助教
山中 広太郎
・日本泌尿器科学会専門医
2011年3月に山口大学医学部医学科卒業後、熊本市民病院臨床研修医、国立病院機構熊本医療センター医員、熊本大学大学院生命科学研究部泌尿器科学分野医員、天草地域医療センター医員などを経て、20年4月から現職