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「あれんじ」 2020年4月4日号

【四季の風】
第49回 燕の子

 燕は雀とともに、身近な鳥。春にやってくるので、「燕」(つばめ、つばくろ、つばくら、つばくらめ)といえば春の季語。南から、いかにも春らしく颯爽と輝いてやってくる。電線に一列に並ぶ姿はみごとで、思わずうれしくなってしまう。結婚式に花を添えたこともある。

乙鳥(つばくろ)はまぶしき鳥となりにけり    中村草田男

つばくらめ斯(か)くまで並ぶことのあり  中村草田男
ウェディングベルつばくらは風切つて   中正

 この燕が五、六月になって産卵して子が生まれると、この「子燕」(「燕の子」)は、夏の季語。大きな口を精一杯開けて、賑やか。熊本地震からもうすぐ四年。地震ののち生まれた子燕たちも、続く余震にちょっと不安気な顔をそろえて出していたのをよく覚えている。


子燕の顔出してゐる余震かな  中正

 さらに秋の彼岸のころともなると、この燕たちも「帰燕(きえん)」「秋燕」(あきつばめ、しゅうえん)となって南へ帰って、ふと淋しくなる。

燕はやかへりて山河音もなし      加藤楸邨