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「あれんじ」 2020年4月4日号

【元気の処方箋】
身体的異常と心理的因子が合わさった 起立性調節障害

 朝から体調がすぐれず、学校へ行けない子どもに見られるという起立性調節障害。どのような疾患なのでしょうか。今回は、その原因や症状、判定基準、治療などについてお伝えします。(編集=坂本ミオ)

【はじめに】約半数に不登校が合併

 起立性調節障害とは、立ち上がる動作をするときに、心臓から送り出される血液の流れの調節が何らかの原因でうまくいかない状態のことです。

 普段、私たちが意識しなくても体の中で内臓などが問題なく動くように調節しているのは自律神経の働きによるものです。起立性調節障害は、この自律神経の不調が主な原因ですが、その発症や経過には体質や生活習慣、心理的ストレスが大きく影響しており、心身症として位置付けられます。

 つまり起立性調節障害は身体的異常と心理的因子がさまざまな割合で合わさった病態なのです。実は、起立性調節障害の約半数に不登校が合併しています。ですから、この病名を医療機関で告げられるのは、何となく体調不良で学校へ行けない時が多いのです。


【症状と診断基準】 多彩な症状 他の疾患を除外した上で判定

 起立性調節障害の症状としては、自律神経の中枢に関連した症状(睡眠障害、体温調節異常、精神症状)や、末梢(まっしょう)の自律神経機能異常に関連した症状(動悸、立ちくらみ、冷え性、便秘、腹痛、下痢、吐き気、手のひらの発汗など)があり、多彩です。

 そのため、診断にはまず他の病気の除外が必要です。甲状腺機能亢進(こうしん)症、副腎機能低下症、脳腫瘍、鉄欠乏性貧血、心筋症、原発性肺高血圧症などの他の疾患を除外した上で、表1の診断基準に基づいて診断されます。

 さらに起立性調節障害は、起立時の血圧や心拍数の反応により次の4種類に分類されます。

❶ 起立直後性低血圧
 起立直後に強い低血圧が起こり、回復に時間がかかる

❷ 体位性頻脈症候群
 起立中に血圧低下を伴わず、著しい心拍数の増加を認める

❸ 神経調節性失神
 起立中突然、血圧低下が起こり、意識低下や意識消失発作を生じる

❹ 遷延性起立性低血圧  
 起立を続けることで徐々に血圧が低下する

 これらを分類するために、起立直後に起こる血圧低下が回復するまでの時間を測定する新起立試験が用いられます。


【表1】 起立性調節障害の診断基準


【原因】慢性的なストレスも

 起立性調節障害の子どもは、一般的に周囲の環境に過剰に適応して気を使う傾向があり、幼少時から従順な性格を持つとされます。「NO」と言うのが苦手で、自分を抑え、周囲の人に合わせて周りからの期待に応えようとする傾向があります。そのため、日常生活で慢性的にストレスを感じながらも、発散できずに無意識下にため込んでいる可能性が高いとされます。

 起立性調節障害に不登校を合併する率は50〜60%と高く、その不登校状態は、起立性調節障害の症状が治療により軽減した後も持続し、心理療法が必要になる場合もあります。その場合には「心身症としての起立性調節障害」チェックリスト(表2)を用いて判定します。


【表2】 「心身症としての起立性調節障害」チェックリスト


【検査と治療】 治療は本人の理解から 休養、生活リズム、運動や薬物療法など

 検査は、着席もしくは寝た状態と、起立した状態で血圧、脈拍数を測定し、変化を見るのが基本です。その他に、心電図を長く取って毎回の心拍間隔の微妙なずれを解析することで、自律神経機能の評価を行ったり、必要に応じて、知能検査や心理検査なども実施します。

 治療は、本人に病態を説明して理解させることから始まります。そうすることで、治療への積極的な参加を図り、ストレスの軽減、休養につなげます。

 次に、薬を使わない治療法として、生活リズムの調整、弾性ストッキング、加圧式腹部バンドなどの装具や、水分と塩分の摂取、運動療法などを行います。

 学校と連携して学校生活の環境調整を行う場合もあります。
 必要に応じて、起立性調節障害の直接的な薬物療法、そして、起立性調節障害に合併するさまざまな症状に対する薬物療法を行います。


【おわりに】 「気の持ちよう」と片付けないで

 現代は、子どもにとってもストレスの多い社会環境にあるといえます。お子さんに毎朝見られる体調の悪さを「気の持ちよう」と片付けず、きちんと睡眠が取れているか、栄養は足りているか、お腹の調子は大丈夫か、学校は楽しく行けているか、部活で無理をしていないか、話ができる友達はいるか、など、基本的なところから見直してみてください。


執筆いただいたのは

熊本大学病院 
生命科学研究部小児科学講座 
助教
野村 恵子
日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医
(専門領域)
神経/筋/発達/発達障害(自閉症、ADHDなど)