【元気の処方箋】
身体的異常と心理的因子が合わさった 起立性調節障害
朝から体調がすぐれず、学校へ行けない子どもに見られるという起立性調節障害。どのような疾患なのでしょうか。今回は、その原因や症状、判定基準、治療などについてお伝えします。(編集=坂本ミオ) |
【はじめに】約半数に不登校が合併 |
起立性調節障害とは、立ち上がる動作をするときに、心臓から送り出される血液の流れの調節が何らかの原因でうまくいかない状態のことです。 |
【症状と診断基準】 多彩な症状 他の疾患を除外した上で判定 |
起立性調節障害の症状としては、自律神経の中枢に関連した症状(睡眠障害、体温調節異常、精神症状)や、末梢(まっしょう)の自律神経機能異常に関連した症状(動悸、立ちくらみ、冷え性、便秘、腹痛、下痢、吐き気、手のひらの発汗など)があり、多彩です。 |
【表1】 起立性調節障害の診断基準 |
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【原因】慢性的なストレスも |
起立性調節障害の子どもは、一般的に周囲の環境に過剰に適応して気を使う傾向があり、幼少時から従順な性格を持つとされます。「NO」と言うのが苦手で、自分を抑え、周囲の人に合わせて周りからの期待に応えようとする傾向があります。そのため、日常生活で慢性的にストレスを感じながらも、発散できずに無意識下にため込んでいる可能性が高いとされます。 |
【表2】 「心身症としての起立性調節障害」チェックリスト |
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【検査と治療】 治療は本人の理解から 休養、生活リズム、運動や薬物療法など |
検査は、着席もしくは寝た状態と、起立した状態で血圧、脈拍数を測定し、変化を見るのが基本です。その他に、心電図を長く取って毎回の心拍間隔の微妙なずれを解析することで、自律神経機能の評価を行ったり、必要に応じて、知能検査や心理検査なども実施します。 |
【おわりに】 「気の持ちよう」と片付けないで |
現代は、子どもにとってもストレスの多い社会環境にあるといえます。お子さんに毎朝見られる体調の悪さを「気の持ちよう」と片付けず、きちんと睡眠が取れているか、栄養は足りているか、お腹の調子は大丈夫か、学校は楽しく行けているか、部活で無理をしていないか、話ができる友達はいるか、など、基本的なところから見直してみてください。 |
執筆いただいたのは |
熊本大学病院 |