【四季の風】
第48回 木守柿(きもりかき)
俳句の「季語」は面白いもので、なかには、一寸(ちょっと)変わった味わい深いものもある。たとえば「木守(きまもり)」がそうで、冬になって実がすっかりなくなっても、一個だけ残されていたりする。それはまるでその木のいのち継ぎのための祈りやお守りのようでも、鳥たちのために残してあるようでもある。 「柿」は秋の季語だが、冬もひとつポツンと空に浮かんでいるこの実を「木守柿」といって、冬の季語になる。これが柚だと、「木守柚(きもりゆず)」という。 |
信仰のたとへば島の木守柿 中正 |
殉教の島・天草が好きで時々行くが、ここで冬の青空に高々と残った真っ赤な柿を見かけると、それがまるでこの島の人たちが何百年も隠れて守り継いできた熱い信仰の証しのようで、しみじみと心打たれる。 |