熊本大学大学院
生命科学研究部
産科婦人科学講座
准教授大場 隆
■子宮頸がんの主な原因はウイルス感染
子宮頸がんは子宮の下部1/3に生じるがんで、日本では毎年約1万人の女性が罹患し、約3千人が亡くなっています。特に若い女性の子宮頸がんが増えており、20代、30代の女性のがん死因の第1位となっています。
子宮頸がんの大部分はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。HPVはありふれたウイルスで性交渉によって子宮に感染します。多くの場合ウイルスは自然に排除されますが、約10%の人では感染が持続し、その一部の人が数年後に子宮頸がんを発症します。
このためHPVの感染を予防するHPVワクチンが開発され、現在世界の70カ国以上が国の主導で接種を行っています。ワクチンと子宮がん検診の普及に積極的に取り組んできたオーストラリアでは、今から50年後には子宮頸がんがほぼ撲滅されると試算されています。
■2009年に承認された感染予防ワクチン
日本ではHPVワクチンは2009年12月に承認されましたが、接種後の多様な副反応が報告されて、現在は自治体による積極的勧奨が差し控えられています。確かにHPVワクチン接種後の副反応は他の予防接種より多く報告されていますが、これまでの研究ではそれらの副反応とこのワクチン自身との因果関係は否定されています。
HPVワクチンに限らず、薬には一定の確率で副反応があるもので、このリスクとがん予防のメリットをてんびんにかけて判断する必要があります。日本のように子宮がん検診の受診率が極端に低い国では、ワクチン接種の意義は大きいと考えられています。 |