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「あれんじ」 2019年12月7日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第82回】「できることを数える」

女性医療従事者によるリレーエッセー【第82回】

【第82回】「できることを数える」
熊本大学病院 
小児科医師・永松 扶紗

 「食べられないものを数えるのではなく、食べられるものを数える人の方が、治療がうまくいきます」

 これは以前、ある先生が講演の中でおっしゃっていた言葉です。

 病気の中には、治療のために食事制限が必要になるものがあります。隣の人が食べているものが自分には食べられない―。それはつらく感じることだと思います。そんな中でも、「これなら食べられる」というものを探し、それが増えるのを喜ぶ人は治療がうまくいきやすいのだそうです。

 私が専門としている子どもの内分泌疾患 (ホルモンの異常が出る病気) の中には、おじいちゃんおばあちゃんになるまで治療が必要な病気があります。ただ、きちんと治療をすれば元気に過ごせることが多いのも特徴です。「治療は大変だけど、生活は制限なく何でもできます」と説明をしますが、私が患者さんの立場だったらきっと、「ずっと治療しないといけない…」という部分で、まず落ち込むだろうなと常々思います。

 でも、先日来院された患者さんと親御さんは、「何でもできる」ことを一番に喜んでおられました。心の中では葛藤もあったかもしれませんが、喜びを言葉にされたことに、私は感銘を受けました。

 病気の時だけではなく、人生の中では取捨選択をしなければならない時が多々あります。隣の芝生の方が青く見えることもあります。つい「できないこと」を考え落ち込みがちですが、きっと「できること」を数えていく方が、同じ状況でも豊かな人生を送れるだろうなと、この先生や患者さん親子の言葉を思い出して考える今日この頃です。