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「あれんじ」 2019年12月7日号

【元気の処方箋】
尿のトラブルはなぜ起きる? 過活働膀胱(かかつどうぼうこう)を知ろう

 寒い季節はトイレが近くなるものですが、「それにしても回数が多い」あるいは「間に合わずに漏れることがある」といった経験をすると、心配です。そこで今回は、過活動膀胱についてお伝えします。(編集/坂本ミオ)

【はじめに】こんな症状に困っていませんか?

 以下のような尿のトラブルに困っていませんか?

◎ 急にトイレに行きたくなり、漏れるかもとヒヤヒヤする
◎ 冷たい水を扱うと尿意を催す
◎ 尿が漏れて恥ずかしい思いをした
◎ 夜中に何度もトイレで目が覚めて熟睡できない
◎ トイレが気になり、旅行や長時間の外出を控えてしまう

―これらの症状がある場合、過活動膀胱かもしれません。


【過活動膀胱ってどんな病気?】
【図1】過活動膀胱の年代別有病率

[過活動膀胱の条件]

排尿回数1日8回以上かつ尿意切迫感週1回以上

[対象]
全国住民台帳から無作為に抽出した40歳以上の男女10,096人

[方法]
2002年11月に排尿に関する質問票を郵送。対象者がこれに自己記入して郵便で返送したものを解析した。

[解析数]4,570人(男性46%)

[平均年齢]60.6歳

本間 之夫ほか:日本排尿機能学会誌 14(2):266:2003 [L20040317031]より改変

 「尿意切迫感」が必ず現れる症状で、通常は「頻尿」や「夜間頻尿」、「切迫性尿失禁」を伴う病気とされています。

@ 尿意切迫感:急に強い尿意が起こり我慢ができない状態
A 頻尿:昼間排尿のために8回以上トイレに行く状態
B 夜間頻尿:夜、寝ている間に排尿のために1回以上起きる状態
C 切迫性尿失禁:急に強い尿意が起こり、トイレまで我慢できず尿が漏れてしまう状態

 このような過活動膀胱症状を訴える患者さんは、40歳以上の日本人男女のうち12%といわれており、高齢者になればなるほど患者さんの数が増える傾向にあります(図1)。


【原因は?】

 過活動膀胱は膀胱の筋肉(排尿筋)が勝手に収縮してしまう不随意収縮によって起こります。このように勝手に筋肉が収縮する原因はさまざまです。

 脳血管の病気(脳出血や脳梗塞)、パーキンソン病などの神経の病気や、加齢による膀胱機能の変化、膀胱や子宮、直腸を支える骨盤底筋の脆弱化、前立腺肥大症などの病気が挙げられ、はっきりした原因が分からないことも少なくありません。

 また膀胱腫瘍や膀胱結石、前立腺がん、膀胱炎、子宮内膜症などの病気がある場合も同じような症状が起きる可能性があります。


【どうやって診断するの?】
【図2】過活動膀胱症状質問票

 下の症状がどのくらいの頻度でありましたか?この1週間のあなたの状態にもっとも近いものをひとつだけ選んで、点数の数字を○で囲んでください。

【過活動膀胱の診断基準】

尿意切迫感スコア(質問3)が2点以上、
かつ合計スコアが3点以上

過活動膀胱診療ガイドラインより

 問診が主となりますが、過活動膀胱以外の“治療が必要な病気”がないか検査を行います。

【問診】
@ 過活動膀胱症状問診票(図2)
 簡単な質問になっているのでセルフチェックしてみましょう。
 質問は4つです。質問1は昼間の頻尿、質問2は夜間頻尿、質問3は尿意切迫感、質問4は切迫性尿失禁に関しての質問となっており、当てはまる頻度に相当する点数に○をつけてもらいます。
 過活動膀胱の診断基準は、質問3が2点以上、かつ合計点数が3点以上となっています。
A 排尿日誌
 症状を医師に正確に伝えるために排尿日誌をつけることを勧められることもあります。
 日誌には排尿の時刻と毎回の排尿量、尿失禁の回数や使用したパッドの枚数、あるいは飲んだ水分の量などを記録します。

【検査】
 過活動膀胱と同じような症状を起こす可能性のある、膀胱や尿道・膀胱周囲などの骨盤内の病気や、膀胱炎などの尿路感染症がないか確認するために、次のような検査を行います。
@ 尿検査
 尿路系の細菌感染症や血尿がないかを調べることができます。場合によってはがんの早期発見に役立つこともあります。
A 超音波検査
 腎臓や尿管、膀胱にがんや結石(腎結石・尿管結石・膀胱結石)がないか、また膀胱の状態や、排尿した後に尿の残り(残尿)がないかを調べます。
B その他
 必要に応じて尿細胞診(尿中のがん細胞の有無)、PSA採血(前立腺がんの腫瘍マーカー)、膀胱鏡検査を行います。


【どんな治療があるの?】
【図3】過活動膀胱の治療方法

 過活動膀胱の治療には、主に「薬物療法」と「行動療法」があります

 過活動膀胱の治療として主に薬物療法と行動療法があります(図3)。

 薬物療法には膀胱の過敏な働きを抑える抗コリン薬や膀胱の筋肉を緩めるβ3(ベータスリー)阻害薬があります。特に抗コリン薬には副作用として口渇、便秘、目のかすみなどが挙げられます。

 行動療法には生活指導、膀胱訓練、骨盤底筋体操、定時排尿などがあります。

@ 生活指導
 食事や運動による減量、禁煙、水分を取りすぎない、カフェイン・コーヒー・アルコール・炭酸飲料を控えるなどの飲水指導、便秘に注意するなど日常生活に気を付けます。
A 膀胱訓練
 尿意を感じたらすぐにトイレに行くのではなく、少し我慢することで膀胱が尿を十分にためられる状態にします。具体的には、

◎尿意を感じたら5分我慢する
◎5分我慢できるようになったら、10分我慢する
◎10分我慢できるようになったら15分我慢する

 少しずつ尿を我慢できる状態を伸ばし、2〜3時間我慢できるような状態を目標にします。

B骨盤底筋体操
 膣や肛門を意識的に緩めたり締めたりする体操です。骨盤底筋を鍛えることで尿漏れを改善します。

1.あお向けになり、両足を肩幅程度に開き、軽く両膝を立てる
2.体の力を抜き、膣と肛門を意識的に締め、ゆっくり5つ数えてから緩める
3.「ゆっくり締めて、ゆっくり緩める」動作と「速く締めて、速く緩める」動作を併せて20〜30回繰り返す
4.これを1セットとして、1日に2〜3セット行う

 骨盤底筋体操は毎日根気強く続けることが大切です。

C定時排尿
 尿が漏れない範囲で間隔を決めて排尿を促す方法で、通常2〜4時間おきにトイレ誘導する方法です。
 薬物療法や行動療法で効果が不十分な場合には電気刺激療法や磁気刺激療法などを試みることもあります。


【終わりに】重大な病気が隠れていることも早めに受診を

 過活動膀胱の診断には同じような症状を来す疾患を除外する必要があります。中にはがんなどの重大な病気が隠れていることもあるため、尿のトラブルを年齢のせいと決めつけず、早めに泌尿器科を受診することをお勧めします。

 治療によって、より快適な生活を送ることを目指しましょう。


執筆いただいたのは  
熊本大学病院 泌尿器科 助教
福島 結美(ゆうみ)・日本泌尿器科学会専門医

2010年3月に久留米大学医学部医学科卒業後、国立病院機構熊本医療センター臨床研修医、熊本大学大学院生命科学研究部泌尿器科学分野医員、熊本市民病院医員、国立病院機構熊本医療センター医員などを経て、2019年4月から現職