【元気の処方箋】
知識・意識をアップデートしよう エイズ・HIV感染症の今
エイズ(AIDS :acquired immunodeficiency syndrome :後天性免疫不全症候群)について、皆さんはどれくらい知識をお持ちでしょうか。以前に見聞きした情報がそのままになっていませんか。今回は、大きく進化したエイズ・HIV感染症に関する医療と予防の今をお伝えします。 |
【はじめに】エイズは怖い病気ではなくなった? |
【図1】公益財団法人エイズ予防財団、UPDATE HIV/AIDSより引用
エイズの原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖を抑える薬は近年飛躍的に進歩しました。複数の薬を組み合わせて行う「抗ウイルス療法:ART :anti―retrovirus treatment」の多くは錠剤やカプセルの飲み薬で、1日1回1〜2個服用するだけで十分なウイルス抑制効果がみられます。今では、感染後の早期にARTを開始できれば、免疫不全の進行とエイズの発症をストップでき、感染していない人とほとんど変わらない寿命が得られます。このように早期に発見してすぐに治療を開始し、きちんと服薬を続けることができれば、少なくともエイズで死ぬことはなくなったのです(図1)。 |
エイズはもう感染しない? エイズの流行はおさまった? |
【図2】公益財団法人エイズ予防財団、UPDATE HIV/AIDSより引用
最近、大変重要な報告がありました。HIVに感染していても薬をきちんと服用していれば、パートナーへの感染が起こらないというものでした。「治療による感染予防:TasP: treatment as prevention」ま |
【図3】新規HIV感染者、エイズ患者の報告数 年次推移 |
2018年厚生労働省エイズ発生動向–概要–より引用
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エイズの予防はコンドームだけ? |
セーファーセックス(Safer sex)という言葉があります。「相手も自分も感染しているかどうか分からない場合はコンドームを正しく使い、HIVや性感染症を予防しましょう」という意味です。これは、他の性感染症の予防にもつながりますし、異性間でも同性間でも同様です。 |
【図4】新規HIV感染者、エイズ患者の感染経路別内訳(2017年報告) |
厚生労働省エイズ動向委員会、平成29(2017)年エイズ発生動向–概要–より引用
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HIV検査はどこで受けられる? |
HIV検査は、多くの保健所で受けることができます。しかも、無料匿名です。検査は少量の採血で可能です。保健所によっては他の性病検査を同時に受けることもできます。HIV感染の心配が少しでもあれば、できるだけ早く検査を受けることをお勧めします。自分が住んでいる地域以外の保健所でも検査が受けられます。 |
【終わりに】人類はエイズを克服できる? |
ARTの飛躍的進歩によって、HIV感染後早期の診断と速やかな治療開始が達成されれば、もはやエイズの克服も夢物語ではなくなってきました。しかしながら現実は、HIV感染者の3割近くがエイズを発症して初めて病院を訪れます。 |
執筆いただいたのは |
熊本大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター |