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「あれんじ」 2019年8月3日号

【元気の処方箋】
夏休み子どもの肥満に気をつけて

 夏休みまっただ中。エアコンの効いた部屋でゲームをしたり、ダラダラおやつを食べたり…。学校生活に比べて運動量が減るなか、間食が増え、いわゆる「夏太り」する子どもたちもいるようです。そこで今回は、「子どもの肥満」についてお伝えします。

【Q1】子どもの肥満は増えているのですか?
【図1】日本国内における肥満児の割合の変化と背景

◎上図は2000年までだが、この後、急激な携帯電話・スマートフォンなどの普及によって、さらに日常の活動性・運動量の低下が進んでいると考えられる

※日本小児内分泌学会HPより一部改変して引用

◎全国的に総数は減少 熊本は熊本地震後、増加に

 (図1)は、1965年から2000年までのデータです。食生活や生活環境・習慣の変化などに伴い、小児の肥満は徐々に増えてきました。

 しかし2000年以降、肥満の総数は全国的に減っています。総数としては減っていますが、だからといって喜べる状況ではないのです。というのは、極端な肥満を意味する高度肥満と、高度(極端な)痩せの両極化が進んでいるからです。この高度肥満と高度痩せに、病気が潜んでいることが多いのです。

 また、熊本では2016年の熊本地震後、2年連続で肥満度が上がっています。

 これには、避難所になったり被害を受けたりした体育館やプールの復旧が進まず、体育の授業が十分に行われなかったことなどが関係していると考えられますが、猛暑の熊本では夏に戸外で遊べない、部活や塾で夕食の時間が遅いなど、さまざまな要因が複合的に絡まった結果だと思います。


【Q2】子どもの肥満の問題点は何でしょうか?

◎「今」と「将来」に問題が重要な早期発見と改善

 大きく分けて2点あります。一つは、その時の生活を心身ともに適切に営めるかという問題。もう一つは将来、日本人の死の大きな要因になっている成人肥満につながること。つまり、今と将来の問題です。

 例えば体重が90キロある子どもが、ダイエットしたわけでもないのに3カ月ほどで80キロに痩せたとします。元々肥満であることから10キロの体重減を周りの大人も気にしない…といった場合。これは明らかに異常で、糖尿病が進んだと考えるべきです。放置すると、けいれんや意識消失を起こし、救急搬送される事態を招きます。

 糖尿病に気付かぬままプールやお風呂で意識を失って危険な状況に陥る場合も考えられます。糖尿病は治療すれば治ります。早く見つけることはとても大事なことです。

 また、肥満の中には思春期早発症といわれる症状の子どもが含まれていることがあります。男児では平均12歳、女児では10歳ごろに始まる思春期が2〜3歳早く始まる場合に疑われ、本人も驚きますし、学校生活に支障があることもよく経験されます。この場合、原因にホルモンの異常が関与しているため、治療が必要になります。急に体格が大きくなる場合には、時に何か他の病気が隠れている場合があるので、注意が必要です。


◎日本人の3大死因の大きな要因に
【図2】子どもの肥満は大人の肥満につながる大きな要因

※日本小児内分泌学会HPより一部改変して引用

 そして注意したいのは、子どもの肥満が大人の肥満につながるということです(図2)。思春期肥満の70〜80%は成人肥満につながります。熊本市では全ての小学校で学童後期へと向かう10歳児を対象に小児生活習慣病検診を行っていますが、ここで発見し、適切な介入によって肥満をくい止めることが大変重要なのです。

 肥満は生活習慣病の最大の原因です(図3)。それが心疾患、脳血管疾患に関わっていることは多くの皆さんが認識されているのではないかと思います。

 加えて、肥満が増えるとがんの発生率も高まることが報告されています(図4)。肥満の人の腸内細菌は発がんを進める有害物質を慢性的に分泌してがんを発生しやすくしていることが証明されています。


【Q3】子どもの肥満を防ぐにはどうすればいい?
【図3】肥満は生活習慣病の最大の原因

※日本小児内分泌学会HPより一部改変して引用

◎「今治せば問題ない」子どもが理解すれば効果が

 先に述べた小児生活習慣病予防検診で肥満が認められ、その後の血液検査で脂質異常症と診断されて当院で治療した子どもたちの1割は、家族性高コレステロール血症で、治療介入が必要でした。一方9割は生活習慣が原因の肥満。食事、運動、生活リズムの見直しで、その9割は改善しています。

 中でも食事は大事です。ハンバーグやフライドポテト、ポテトチップスなどが好物という子どもが多いのですが、子どもに「肥満が病気につながること」「今治せば問題ない」ことをきちんと伝えると、子どもはちゃんと取り組んでくれます。また、その結果痩せれば、その成功体験は自信につながり、再発しにくくなります。

 カロリーの低い和食メニューを中心にし、牛乳やヨーグルトは低脂肪に、コレステロール値が高くならないオイルを使い、マヨネーズはカロリーハーフに、など家族ぐるみで取り組みましょう。

 できるだけ良い食材で子どもの健全な体を育てていきたいものです。


【メモ】肥満型に多い腸内細菌がある!?
【図4】がんの主要な原因

※日本癌学会HPより一部改変して引用

 最近耳にする機会が多い腸内細菌(腸内フローラ)。肥満の人には、食物を分解して人が太りやすい栄養素を増加させ、腸から吸収しやすくする菌が多いことが分かっています。つまり、腸内細菌環境は肥満の大きな一因。そしてこれは、一緒に住んでいる家族と同じ菌になりやすいことが分かっています。


【終わりに】「健康で社会にデビュー」を

 保護者の役割は、子どもを社会に出し、自立させることでしょう。社会に出た時、既に病気であっては、その後の長い人生を充実させることが大変になります。ぜひ「健康で社会にデビュー」させてほしいと思います。


話を聞いたのは

熊本大学大学院生命科学研究部
小児科学分野
松本 志郎 准教授

・日本小児科学会専門医・指導医
・ヨーロッパ先天代謝異常学会(EIMD)認定医コース終了・臨床研修指導歯科医師