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「あれんじ」 2019年7月6日号

【四季の風】
第46回 夏薊(なつあざみ)

 薊は、春も終わりのころの花。大きいのでは一メートル近くにもなって、裂けた葉や茎に手強い刺(とげ)もある。大きいものは鬼薊というし、夏は夏薊ともいう。

 とはいっても、花は女性の眉をととのえる刷毛に似ているので、「眉はき」や「眉つくり」というやさしい別名もある。だから春は、

大原女の三人休む薊かな   野村喜舟

とやさしく詠(よ)んだり、夏だと、

ほこりだつ野路の雨あし夏薊  飯田蛇笏


と、いかにも夏らしく荒々しく詠んだりもする。

これよりはスコットランド夏薊  中正

 これはもう四十数年も昔、イングランド北部の湖水地方からスコットランドへ抜けたときの句。両者は元々異国で、その折も国境を越えるときの感動があった。スコットランドと聞くだけで山国を思うし、国花もそれにふさわしく、薊。ついでにいえば、イングランドはバラ、ウェールズは水仙、北アイルランドはクローバー。

 こうして、夏といえば夏薊、夏薊といえばすぐスコットランドを思い出してしまう。