【元気!の処方箋】
身近になった 心臓の検査
健康の維持には、疾患の予防や早期発見・早期治療が大事です。突然症状が現れることが多い心疾患では、その課題解決のため検査機器や方法が進化しています。今回は、身近になった心臓の検査についてお伝えします。 |
【はじめに】 |
急性心筋梗塞、不整脈、心不全といった心疾患は日本人の死因の第2位を占めると同時に、一命を取り留めても要介護状態になってしまう原因疾患の一つです。つまり健康長寿を全うするには心臓病の克服が重要です。 |
【狭心症の原因となる部位を特定!】 〜冠動脈CTと心筋シンチの融合画像〜 |
【図1】冠動脈CTと心筋シンチの融合画像
熊本大学病院 放射線診断科 尾田済太郎氏提供 青〜緑色に示される心筋虚血部位(白矢印)を治療するために、その部位を栄養する冠動脈(黄矢印)の狭窄を拡張すればよいことがあらかじめ予想される。 狭心症が疑われる患者さんでは、造影剤を用いた冠動脈CTで冠動脈狭窄(きょうさく)を検索することが行われます。近年ではこの狭窄を、冠動脈ステント留置術を用い、体への負担を小さくして拡張することが可能になりました。 |
つまり、カテーテル治療を行う前に、治療標的が明らかになりますので、理にかなった事前の治療戦略立案が可能になります。 |
心筋シンチ検査のマシーン
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【失神や動悸(どうき)の原因の早期診断・治療に】 〜携帯型心電図、ループレコーダー〜 |
【図2】植え込み型心臓モニターの植え込みイメージ
手のひらにのるほどの小さな機器が、最長3年間、心臓を24時間モニタリングし、不整脈や失神した時の心電図を記録する。植え込み型心臓モニターは図の通り小さなスティック状。胸の皮膚を1cmほど切開し、機器を皮膚の下に挿入(植え込み)して使用する。 症状出現前の診断が難しい疾患の代表が不整脈です。不整脈の症状は失神や動悸など患者さんによってさまざまですが、不整脈発作は“一過性”に出現することが多く、また、その発作の持続時間は患者さんによってバラバラで発作中の心電図を記録することが困難です。 |
【MEMO】重症心疾患の治療例 |
【図3】慢性完全閉塞病変に対する治療前後の冠動脈造影
熊本大学病院 循環器内科 坂本憲治氏提供 治療前は、左前下行枝近位部で完全に閉塞し(黄矢印)長い距離の閉塞を認めたが(白破線)、この部分の虚血を解除するため、高難度手技により、再開通に成功した。 ショック症例に対するカテーテル型の人工心臓 :インペラ(IMPELLA)。熊本大学病院ではこれを導入し、県内外の重症心疾患を受け入れています。 |
【終わりに】 |
心房細動週間ウェブサイトより
【CHECK!】最も簡単な検脈 自分で不整脈を見つける最も簡単な方法は、自分の脈をチェックすること(検脈)です。 親指の付け根にある橈骨(とうこつ)動脈に反対側の手の人差し指、中指、薬指3本を当てて脈拍を確認します。 脈が不規則な場合は不整脈の可能性がありますので、かかりつけの病院で心電図検査を受けられることをお勧めします。 以上のように、現在では心臓の検査は大変身近で患者さんにとって負担の少ないものになりつつあります。 |
執筆いただいたのは |
熊本大学病院 副病院長 |