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「あれんじ」 2019年4月6日号

【四季の風】
第45回 山笑う

 老若男女を問わず、うつむき加減にスマホばかり見ている人を見るといつも、もったいないなあと思う。ちょっと見上げると、すぐそこに立田山や金峰山があり遠くには阿蘇もあって、四季折々違う表情を見せてくれるのに。

 昔から「季語」に込められた言葉のセンスは、鋭く楽しい。山にも四季があって、まるで人間みたいに、春の山は目覚めて「山笑う」といい、夏の山は緑に「山滴る」、秋の山は紅葉で「山粧い」、冬の山は深々と「山眠る」という。山も生きているのだ。

故郷やどちらを見ても山笑ふ   正岡子規

太陽を必ず画く子山笑ふ 高田風人子
山笑ふまだからつぽのランドセル 目黒孝子
山笑ふ少女ひらりと逆上がり       朝本雅子

 子規は故郷の山が大好き。学校に心ときめかせる新入生や逆上がりだって軽々できる女の子を見て、春の山は笑っているのだ。