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「あれんじ」 2019年1月12日号

【四季の風】
第44回 湯島の冬

 最近猫で有名になった湯島へは、何度か日帰りしたことがある。深呼吸しながら島を一周したり畑を歩いたり、俳句づくりにはもってこいの島だ。

 小さいが歴史豊かな島で、天草島原一揆の談合の話のほか、江戸時代の相撲取りの記念碑や高山右近の住居跡というものもある。

 冬海を来て島に近づくと、いかにもどっしりと島に根があるようにも見える。畑の脇の墓で日向ぼっこをしていると、まるでここが故郷のように思えてくるから不思議だ。

 帰りには必ずこの地の名産の大根を買って乗船するが、まだこの立派な大根の俳句は作ったことがない。

大寒の島の根といふものを思ふ        中正

歩兵たりしを冬草の青々と            〃

故郷(ふるさと)にあらねど島の冬あたたか     〃