あれんじのページ

トップページあれんじのページ「あれんじ」 2019年1月12日号 > 白内障 適切な診断・治療で改善を!

「あれんじ」 2019年1月12日号

【元気!の処方箋】
白内障 適切な診断・治療で改善を!

 加齢に伴い増える疾患の一つである「白内障」。手術で改善することが知られていますが、その方法やリスクなど、治療法選択に役立つ情報をお届けします。

【はじめに】白内障は身近な病気です!

 白内障の患者さんは全国で4000万人超と推計されており、身近な病気といえるでしょう。

 年齢とともにその割合は増え、70歳代では80%以上の方が白内障と考えられています。

 また、白内障の手術は国内で年間140万件超行われて、最も件数の多い目の手術です。


【白内障ってどんな病気?】●目の中でレンズの働きをする水晶体
【図1】目がモノを見る仕組み

 まず、目がモノを見る仕組みから説明します(図1)。

 例えばリンゴを見る場合、リンゴに反射した光が目の中に入ってきます。黒目の表面の組織である角膜を通過した光は、その奥の茶目(虹彩)の中心に開いた穴(瞳孔)を通過します。さらにその奥の、水晶体といわれるレンズを通過した光は、眼球の内張りをしている網膜に到達し、ここで光を感知します。

 リンゴのきれいな像を網膜に映し出すためには、ピントを合わせる必要があります。虫眼鏡で太陽の光を集める実験をされたことがあれば、イメージがつかみやすいと思います。角膜と水晶体が凸レンズの働きをしますが、水晶体はレンズの度数を変えることができ、この働きでピントを合わせることができるのです。


●水晶体の中が濁るのが白内障
【図2】目の構造
水晶体は直径9mm、厚さ4mmの凸レンズの形をしていて、膜(嚢)に包まれています。

 水晶体は虫眼鏡のレンズを分厚くしたような見た目です。断面図を見ると、水晶体は皮質と核と、薄い被膜である嚢(のう)で構成されていることが分かります(図2)。

 透明であった皮質と核が濁った状態が白内障です。

 加齢によるものが最も多いのですが、けが、目や体の病気、ステロイド薬、生まれつき(先天性)などの原因もあります。


【症状】●少しずつ進行 進みすぎないうちに手術を

 多くの場合、白内障は少しずつ、年単位で進みます。初期では濁りの程度は少なく、症状がないことも多いのですが、水晶体の濁りで光が乱反射することで、まぶしさを感じやすくなったり、一つのモノが複数に見えたりすることがあります。

 この時点では視力は良いことが多いので、積極的に手術を勧めることはありませんが、症状が日常生活に支障を来すようなレベルであれば、相談の上、手術を行うこともあります。

 白内障が進行すると、濁りが強くなってきます。カメラのレンズが曇ると、撮った写真がかすんでしまうように、モノがかすんで見えます。実際に視力も下がるので、この段階で手術を行う場合が多いです。

 さらに進行すると、濁りは極めて強くなり、失明状態に近くなります。ここまで進行すると手術の難易度が上がります。手術時間が長くなり、合併症の確率も上がってしまうので、その前に手術を行う方が良いと考えます。


【治療】●視力の改善には「レンズの入れ替え」手術
【図3】超音波水晶体乳化吸引術

 白内障に対する目薬は、進行を遅くする効果は期待されますが、視力を改善させる効果はありません。

 一方で、白内障手術は一般的に視力の改善が期待できます。

 手術は簡単に言うとレンズの入れ替えです。水晶体の前面の嚢に丸い窓を作り、そこから中の核と皮質を摘出します。この時、超音波で細かく砕きながら吸い出すことで、傷口を2〜3oと小さくすることが可能です。

 核と皮質を摘出してしまうと、前面に丸い窓を持った中空の嚢の袋が残るので、その中に人工レンズを入れます(図3)。

 最近では、乱視矯正や遠近両用の人工レンズも出てきましたが、対応できる施設はまだ限られています。


●手術には危険性も
【図4】後発白内障のレーザー治療
後発白内障は、レーザーを使って簡単に濁りを取ることができます。視力はすぐに回復し、入院の必要もありません。

 手術手技と機械が発達したため、白内障手術の安全性はかなり高いといえます。それでも合併症はゼロにはならず、術後視力に影響するような重症のものもあります。

 重症なものの代表として、眼内炎と呼ばれる感染症があります。手術室は雑菌の少ない環境ですが、完全に無菌にすることは不可能ですし、術後に細菌が体内に入る場合もあります。白内障手術の場合は、傷口が小さく手術時間が短いことから確率は低いのですが、万が一起こると失明につながる怖い合併症です。

 また、特殊な出血である、駆逐性出血と呼ばれるものも、確率は低いのですが、これも失明につながりえます。

 一方で、あまり怖くはないのですが、よくある合併症として、後発白内障があります。これは手術の時に残した嚢が、最初は透明なのですが、数カ月から数年後に濁ってくるものです。そうすると、人工レンズが曇っているのと同じで、またかすんで見えるようになります。

 ただ、この場合は、薄い膜一枚なので、レーザーで嚢を破り、窓を作ることで視力を回復することができます(図4)。

 他にも起こりうる合併症はありますので、手術を受ける前に確認しておきましょう。


【終わりに】よく相談の上、治療方針を決めましょう

 白内障は身近にある疾患ですが、適切に診断、治療を受ければ怖い病気ではありません。

 見え方を改善する手術は安全性が高いのですが、合併症のリスクはあります。

 中には手術の難易度が高い場合や、術後の視力の改善が期待しにくい場合もあります。メリット、デメリットをよく考えて、担当の医師と相談の上、治療方針を決められたら良いと思います。


執筆いただいたのは

熊本大学大学院
生命科学研究部眼科学分野
井上 俊洋 教授

・日本眼科学会眼科専門医