すぱいすのページ

「あれんじ」 2018年12月1日号

【ママの心配・不安に応える 子育て応援クリニック】
ウイルス性胃腸炎

Q.冬になり、ウイルス性胃腸炎が心配です。気を付けるべきことを教えてください。

防ぎたい脱水

 ロタウイルスやノロウイルスが有名なウイルス性胃腸炎は、「おなかの風邪」とも呼ばれます。

 胃腸炎ウイルスは、消化管に入り炎症を引き起こして発熱や下痢、嘔吐(おうと)を引き起こします。残念ながら治療薬はなく、重症脱水になると入院が必要な場合もあります。そうならないため重要なのは、脱水の予防と改善、家族への二次感染予防です。

 脱水の改善には、経口補水液が効果的です。数分間ずつ時間を開けて少量ずつ飲ませて、吐き気や腹痛がなければ飲む量を増やしていきます。母乳やミルクを薄めたりする必要はないとされています。食事は、早めに通常の食事に戻した方が早く治ることが報告されています。

 嘔吐が続いている時は、吐しゃ物が喉に詰まらないように注意しましょう。吐き気止めは、けいれんを起こしやすいため注意が必要ですが、比較的安全な漢方薬が使用されている病院もあります。

 整腸剤は乱れた腸内環境を改善するので使用されます。下痢止めは、自浄作用を抑えて病状を悪化させるため勧められません。


予防接種が有効なロタウイルス

 何より予防が重要です。まずはせっけんをしっかり泡立てて洗い、勢いのある流水でウイルスを流すなど正しい手洗いを心がけましょう。

 汚物の処理は、使い捨てのビニール手袋や、ゴミ袋で手を覆って、直接触れない工夫が必要です。床や衣類の消毒は塩素系漂白剤が有効です。

 ロタウイルス感染症は、ロタウイルスワクチンの予防接種によって入院と外来患者が94%減り、脳症やけいれんが減ることが知られており、ワクチン接種が大変重要です。

 大人がしっかりとした知識で予防と対策をし、胃腸炎で苦しむお子さんを減らしたいものです。


治療薬がないため、予防が大事。正しい手洗いや予防接種を
熊本大学大学院
生命科学研究部
小児科学分野
松本志郎 准教授