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「あれんじ」 2018年12月1日号

【元気の処方箋】
ワクチン以外の感染予防策もセットで実行 インフルエンザを予防しよう

 毎年毎年、冬の到来とともに心配なインフルエンザの流行。最近は、秋や春先に話題になることもあり、気が抜けません。

 今回は、身近な感染症であるインフルエンザについて詳しくお伝えします。

【はじめに】インフルエンザシーズン到来です

 いよいよインフルエンザシーズン到来です。受験生とそのご家族、小さなお子さんの親御さん、ご高齢の方、持病のある方は特に神経を使いますね。

 また、人手不足の折、あらゆる職場でインフルエンザによる欠勤者が多く出ないようにしたいものです。


【Q】流行時期や程度の予想は?
【図1】過去3シーズンのインフルエンザ流行

【A】流行情報を参考に早めの対策を

 例年、早い時期の小流行が報道され、「今年は早い流行か?」と話題になります。昨シーズンの冬は例年より1カ月ぐらい早く流行が始まり、大流行となりました。

 流行の時期、程度の予想は難しいですが、学校の冬休み前に流行が本格化していると、年末年始の大きな人の移動で感染拡大が加速して大流行になるようです(図1)。

 流行状況は都道府県により異なります。県や保健所などの流行情報を参考に早めに対策を強化してください。


【Q】ワクチンには効果があるの?
【図2】11月下旬にワクチンを接種完了した場合のワクチンが有効な期間

【A】感染予防効果、重症化を防ぐ効果が

 残念ながらワクチンを打ってもインフルエンザにかかることはあります。インフルエンザワクチンは万能ではありません。

 インフルエンザワクチンは不活化ワクチンといい、生ワクチンである風疹や麻疹のワクチンより効果がやや弱く、効果持続も短くなります。またインフルエンザウイルスは一冬の間に微妙な構造変化(変異)が起こりワクチンの効果が落ちることがあります。

 しかし重症化を防ぐことが示されており、感染予防効果は流行シーズン、年齢層によっては50〜80%程度に達します。流行期には周囲にまん延する感染症であり、生活環境に多くのウイルスが存在します。また感染力も非常に強いので、ワクチンを打った上で、さらにワクチン以外の感染予防策をセットで実行することが重要です。

 ワクチンの効果の持続は接種完了から4〜5カ月で、効果が出るのに2週ほど要します(図2)。ですので、12 月上旬までには接種しましょう。


【Q】重症化するとどうなるの?

【A】小児はインフルエンザ脳症、高齢者は肺炎に注意

 最も怖いのはインフルエンザ脳症です。小児に起こりやすく意識障害、けいれん、異常行動を起こします。死亡率が10〜30%あり、助かっても後遺症を残すことがあります。

 解熱剤のアスピリンやジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸はインフルエンザ脳症を起こしやすくします。インフルエンザで発熱したときは、これらの薬を避けることで脳症による重症化を引き起こさないようにします。代わりの解熱剤ではアセトアミノフェンが推奨されます。

 高齢者では肺炎に注意が必要です。インフルエンザウイルスそのもので肺炎が起きたり、細菌による肺炎を合併して重症化したりします。

 インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用が肺炎を予防することが報告されており、高齢者には推奨されます。


【Q】手洗いは効果あるの?

【A】外出後や食事の前には必ず!

 インフルエンザウイルスは、咳(せき)やくしゃみのしぶきと手指から感染します。

 インフルエンザウイルスは咳で10万個、くしゃみで200万個も患者から排出され、テーブルなどの平滑な表面で24時間生存します。

 したがって流行期には患者周囲や公共の場のドアノブ、エスカレーターの手すり、買い物カートなどに大量にウイルスが存在します。

 外出から戻った後、間食や食事の前、顔や眼や口を触る前などには、必ず手洗いをしましょう。市販のアルコール剤による消毒も有効です。


【Q】マスクは感染予防に有効?
【図3】

【A】きちんと使えば効果あり

 人と対面して話をするとき、人混みに出かけるときには、マスクを着用します。鼻、口、顎をマスクでしっかり覆ってください(図3)。手洗いと併せてきちんと活用すれば効果があります。

 ただし、マスクの内側にウイルスが付くと感染を起こします。マスクの内側は手で触れないように気を付けましょう。

 また、マスクを一時的に外してテーブルなどに置かないようにしましょう。流行期はテーブルなどにウイルスが多く付着しています。

 さらに、マスクを外す食事時は盲点となりがちです。食べながらの会話でしぶきが飛び、感染が広がります。流行期はしぶきが届きにくいように1メートルほど離れ、横並びで昼食を取るなど工夫しましょう。


【Q】予防薬はありますか?

【A】最大10日までの予防で、保険診療外

 インフルエンザ治療薬の中には予防薬としての使用が認められているものがあります。
しかし、保険は効きませんので自費になりますし、最大10日間までの予防ですので、用途は限られます。そういう意味では、あまりお勧めではありません。


【Q】予防のために注意することは?

【A】十分な睡眠、休養と、室内に適度な加湿を

 インフルエンザの予防に大事なのは、睡眠と休養を十分とることです。体力が低下すると体のナチュラルキラー細胞などによるウイルスに対する免疫力が低下します。

 また、インフルエンザウイルスは生存環境としては乾燥を好みます。置き水や加湿器などによる室内の適度な加湿も効果的です。


執筆いただいたのは

熊本市民病院
感染症内科
岩越 一 部長

・日本感染症学会専門医
・日本呼吸器学会専門医・指導医