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「あれんじ」 2018年8月4日号

【元気!の処方箋】
ピロリ菌検査・除菌が予防につながる 胃がん

 「食べ過ぎて胃袋がパンパンになった」「胃の調子が悪い」など、胃は多くの臓器の中で私たちがその存在を日常的に認識している臓器だといえます。

 今回は、毎日の健康的な暮らしを支える「胃」のがんについて、原因や予防、治療法などをお伝えします。

【はじめに】罹患(りかん)数が最も多い胃がん 必ず粘膜から発生
【図1】

 胃は食道を通って入ってきた食べたものを蓄え、消化し、十二指腸に送る重要な臓器です。

 胃の壁は層に分かれていて、内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5層で構成されています。

 胃がんは必ず粘膜から発生し、粘膜および粘膜下層までにとどまっているがんを早期がん、筋層より深く浸潤したがんを進行がんといいます【図1】。

 最新のデータでは、胃がんはがんの中で最も罹患数(がんになった人の数)が多く(※1)、死亡数では、肺がん、大腸がんに次いで第3位となっています(※2)。

※1 2013年 地域がん登録全国推計によるがん罹患データ
※2 2016年 厚生労働省人口動態統計


【原因・予防】大部分はピロリ菌感染による慢性胃炎から
【図2】ピロリ菌に感染しているかどうか、内視鏡である程度診断することができます。左図は、ピロリ菌感染がない、きれいな胃の粘膜です。右図は、ピロリ菌に感染し、慢性的な炎症が起きている胃で、元々ピンク色だった粘膜が色あせています(萎縮性胃炎)。

 以前と比べると、胃がんで亡くなる人の割合は減ってきていますが、これはヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)の感染率の低下によるものです。

 胃がんの大部分はピロリ菌感染により慢性胃炎を起こしている胃の粘膜から発生します【図2】。ピロリ菌は飲み水や食べ物を通じて感染すると考えられています。日本人のピロリ菌の感染率は、高齢の方ほど高いのですが、上下水道の完備などの生活環境が整備された現代では、感染率は低下傾向にあります。


リスクを減らす ピロリ菌除去最新薬で約90%の成功率

 ピロリ菌がいるかどうか調べる検査は、6つの方法が保険適応となっています。
 
 その中でも尿素呼気試験は、診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断する、簡単に行える診断法で、最も信頼度が高い検査といわれています。
 
 感染していることが分かれば、除菌療法が推奨されます。
 
 除菌は、1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の3剤を同時に1日2回、7日間内服します。最新の内服薬では、約90%の成功率と報告されています。


ピロリ菌以外にも喫煙や塩分摂取に注意

 ピロリ菌を除菌することで、胃がんのリスクを減らすことができると考えられていますが、リスクがゼロになるわけではありません。除菌後も、定期的な内視鏡検査を受けることが勧められます。

 ピロリ菌以外のリスクファクターとしては、喫煙、塩分の過剰摂取や、野菜・果物の摂取不足などがありますので、ピロリ菌感染の有無に関わらず、

◎ 禁煙する
◎ 高塩分食品を取りすぎないようにする
◎ 野菜、果物を十分摂取する

ことが重要です。


【検査】早期がんでは多い無症状 検診で根治可能な胃がんの発見を

 胃がんの代表的な症状は、胃痛、腹部不快感、吐き気、黒色便、体重減少などですが、早期がんでは症状が出ることは少なく、進行がんであっても無症状のことがあります。

 胃がん検診は、自覚症状が出る前に、根治可能な胃がんを発見することを目的としています。検診は、対策型検診(住民検診など)と任意型検診(人間ドックなど)に大きく分けられます。

 対策型胃がん検診では、長年にわたって胃X線検診(バリウム検査)のみが推奨されてきましたが、内視鏡検査も2014年に推奨される検査に加わりました。バリウム検査と内視鏡検査を比べると、早期胃がんの発見は、内視鏡に軍配が上がります。

 現在では、検診への内視鏡検査の導入に向けて、全国の市町村でさまざまな検討がなされています。熊本市の対策型検診では、現在40歳以上の方にバリウム検査のみが行われています。


【治療】早期であれば内視鏡治療や腹腔鏡下手術も
【図3】内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD

 検診で早期のうちにがんが見つかった場合には、内視鏡で治療することもできます(内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術:ESD)【図3】。

 内視鏡治療の対象になるかどうかは、がんの大きさ、深さ(通常粘膜までにとどまるがん)、分化度(分化型、未分化型)などを考慮して決めます。

 内視鏡治療では、口から内視鏡を入れてがんを切除しますので、おなかに傷はできず、1週間程度で退院でき、治療前後でほとんど変わりなく生活することができます。

 また、内視鏡治療の対象にならず、手術が必要な場合でも、ステージT(※)であれば、腹腔鏡下手術の対象になることがあります。

 腹腔鏡下手術は、おなかに5〜6カ所の小さな穴を開けて、そこから専用のカメラや器具を入れ、手術を行う方法です【図4】。通常の開腹手術に比べて、傷が小さいので手術による体への負担が少なく、手術後の回復も早いため、手術件数が増加しています。

 進行がんに対しては、原則として従来通りの開腹手術が行われることが多いです。

※ステージ T (臨床分類)
がんが筋層までにとどまっていて、リンパ節転移を認めないもの


【図4】


生活の質(QOL)保ちながら進行抑える抗がん剤治療

 手術で切除できない範囲にがんが広がっている場合には、抗がん剤治療を行います。外来での治療が中心で、副作用をしっかりと抑えて生活の質(QOL)を保ちながら、がんの進行を抑えることが目標です。

 近年がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)の薬が注目されています。胃がんでも、2017年秋から使用できるようになりました。

 免疫療法は現在さまざまながんに使用されていますが、今までの抗がん剤とは異なった副作用を起こすことが分かっており、熊大病院でも対策チームをつくり、いろいろな診療科が協力して対応しています。


【終わりに】ステージTで見つかれば5年生存率は95%超

 ステージTで見つかった胃がんの5年生存率は95%を超えています。

 胃がんの早期発見のために、定期的に検診を受けましょう。ピロリ菌に感染していた場合には除菌し、胃がんのリスクを減らしましょう。


執筆いただいたのは
熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科学
宮本 英明 特任助教

専門は、消化器悪性腫瘍
・日本内科学会指導医
・日本消化器病学会専門医
・日本消化器内視鏡学会専門医
・日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医
・日本肝臓学会専門医
・総合内科専門医