【元気!の処方箋】
ピロリ菌検査・除菌が予防につながる 胃がん
「食べ過ぎて胃袋がパンパンになった」「胃の調子が悪い」など、胃は多くの臓器の中で私たちがその存在を日常的に認識している臓器だといえます。 今回は、毎日の健康的な暮らしを支える「胃」のがんについて、原因や予防、治療法などをお伝えします。 |
【はじめに】罹患(りかん)数が最も多い胃がん 必ず粘膜から発生 |
【図1】
胃は食道を通って入ってきた食べたものを蓄え、消化し、十二指腸に送る重要な臓器です。 |
【原因・予防】大部分はピロリ菌感染による慢性胃炎から |
【図2】ピロリ菌に感染しているかどうか、内視鏡である程度診断することができます。左図は、ピロリ菌感染がない、きれいな胃の粘膜です。右図は、ピロリ菌に感染し、慢性的な炎症が起きている胃で、元々ピンク色だった粘膜が色あせています(萎縮性胃炎)。
以前と比べると、胃がんで亡くなる人の割合は減ってきていますが、これはヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)の感染率の低下によるものです。 |
リスクを減らす ピロリ菌除去最新薬で約90%の成功率 |
ピロリ菌がいるかどうか調べる検査は、6つの方法が保険適応となっています。 |
ピロリ菌以外にも喫煙や塩分摂取に注意 |
ピロリ菌を除菌することで、胃がんのリスクを減らすことができると考えられていますが、リスクがゼロになるわけではありません。除菌後も、定期的な内視鏡検査を受けることが勧められます。 |
【検査】早期がんでは多い無症状 検診で根治可能な胃がんの発見を |
胃がんの代表的な症状は、胃痛、腹部不快感、吐き気、黒色便、体重減少などですが、早期がんでは症状が出ることは少なく、進行がんであっても無症状のことがあります。 |
【治療】早期であれば内視鏡治療や腹腔鏡下手術も |
【図3】内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD
検診で早期のうちにがんが見つかった場合には、内視鏡で治療することもできます(内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術:ESD)【図3】。 |
【図4】
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生活の質(QOL)保ちながら進行抑える抗がん剤治療 |
手術で切除できない範囲にがんが広がっている場合には、抗がん剤治療を行います。外来での治療が中心で、副作用をしっかりと抑えて生活の質(QOL)を保ちながら、がんの進行を抑えることが目標です。 |
【終わりに】ステージTで見つかれば5年生存率は95%超 |
ステージTで見つかった胃がんの5年生存率は95%を超えています。 |
執筆いただいたのは |
熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科学
宮本 英明 特任助教 専門は、消化器悪性腫瘍 ・日本内科学会指導医 ・日本消化器病学会専門医 ・日本消化器内視鏡学会専門医 ・日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 ・日本肝臓学会専門医 ・総合内科専門医 |