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「あれんじ」 2018年7月7日号

【四季の風】
【第42回 蟇(ひきがえる)と山椒魚(さんしょううお)】

 歳時記で「夏」は、水辺の動物の宝庫。私は前から蟇と山椒魚が気になっている。蟇は昔、我が家の庭の池の隅にいた。姿はいかつくて動きは緩慢。いつも眠っているのか瞑想(めいそう)しているのか、威厳があってユーモラス。目を合わせると、思わず「人生とは何か」と問われている気がしたものだったが、最近とんと見かけない。

蟇(ひき)歩く到りつく辺(へ)のある如く        中村汀女

蟇(ひきがえる)誰(たれ)かものいへ声かぎり   加藤楸邨

蟾蜍(ひき)あるく糞量(ふんりょう)世にもたくましく  〃

 もうひとつは山椒魚。これは「魚」といっても蠑螈(いもり)と同じ両生類。体の色と匂いが山椒に似ているというが、本当にそんな匂いがするのだろうか。生命力が強くて半分に裂かれても生きているから「はんざき」ともいう。何とも不思議な動物で、私はまだ実物は見たことはないが、以前隠岐島で標本を見たことがある。印象が強烈で、その夜は夢に見て、朝目覚めたとき私は、はんざきになった気がした。明らかに、はんざきが私に乗り移ったのだった。

ははんざきのやうに目覚めて隠岐にあり 中正

はんざきの傷くれなゐにひらく夜    飯島晴子