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「あれんじ」 2018年7月7日号

【元気!の処方箋】
胃がんや大腸がんの早期発見に有効 内視鏡検査(治療)を正しく知ろう

 胃がんや大腸がんの早期発見に役立つ内視鏡検査。機器や技術の発達などにより、以前より楽に受けられるようになったと聞きます。

 今回は、内視鏡検査(治療)のメリット・デメリットなどについてお伝えします。

【はじめに】「胃カメラ」「大腸カメラ」と呼ばれる内視鏡検査

 内視鏡検査とは、先端に小型のレンズを内蔵した直径1p程度の細長い管を、口あるいは肛門から挿入し、消化管(主に食道、胃、大腸)の内部を観察する検査です。一般には「胃カメラ」や「大腸カメラ」と呼ばれています。

 消化管の小さな腫瘍の診断に極めて有効で、ポリープ(腺腫)や初期のがんであれば内視鏡で切除することもできます。


【内視鏡のメリット・デメリット】
内視鏡検査で見つかった大腸ポリープ。がんが一部に混ざっている形をしています

◎メリット

・CTやPET検査で分からない小さなポリープやがんを発見できる内視鏡検査

 胃がん、大腸がんの早期発見には、内視鏡検査が最も優れています。CT検査やPET検査よりも早期の段階でがんを発見することができます。

 また、病変を直接観察することができ、組織生検(組織の一部を取ること)もできるので、腫瘍が良性なのか悪性なのか、正確に診断することができます。

 最近では、抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用中で生検ができない方でも、特殊な光を当てたり、腫瘍の表面を染色したりし、内視鏡で拡大観察することで、生検をしなくてもがんの診断が正確にできるようになっています(図1、2、3)。


特殊光(NBI)で観察するとポリープの表面構造がはっきりします。黄色の線で囲んだ部分にがんがありそうです


染色し拡大すると腺腫の一部にがんが混じっていることが分かりました。黄色の線より左が良性の腺腫、右ががんです


・おなかを切らず、体の負担が極めて少ない内視鏡治療

 内視鏡検査でポリープや早期のがんが見つかった場合、内視鏡で治療することもできます。

 内視鏡治療は、外科的な手術とは異なり、おなかを切ることなく、内視鏡でポリープや早期のがんをきれいに切除する手術です。

 内視鏡治療の方法には、ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります(図4)。内視鏡治療の対象と治療法は、大きさ、がんの深さ(深達度)、形態を考慮して決定されます。

 ポリペクトミーやEMRは、比較的容易なため、開業医や一般病院でも行われています。治療するポリープの大きさ、個数によっては外来での日帰り治療が可能です。

 ESDは特に2p以上の比較的大きな腫瘍に対して行われ、より高度な技術を要します(図5)。そのため、外科設備を備えた内視鏡治療専門施設で行う必要があり、一般的に1週間程度の入院を要します。それでも、臓器の切除を伴わないため回復が早く、治療前後でほとんど変わりなく生活することができます。


図1の早期がんもESDできれいに切除できました


△デメリット

・大腸内視鏡検査では大量の下剤を飲む必要がある

 大腸内視鏡検査では大腸の粘膜を調べるため、便を全て出し、大腸を空っぽにする必要があります。そのため検査前日や検査当日に大量の下剤を服用する必要があります。

・内視鏡治療は、腺腫(良性腫瘍)や早期がんの一部しか対象にならない

 内視鏡治療は、「リンパ節転移の可能性が極めて低く、腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあること」が原則です。

 早期がんでも、粘膜下層に深く入りこんだがんや進行がんでは、リンパ節や肝臓などの他臓器に転移している可能性があるため外科的切除や化学療法の対象となり、内視鏡治療の対象とはなりません。

 内視鏡治療の対象になるかどうかは、専門医にご相談ください。

・内視鏡検査・治療に伴う合併症の危険がある

 非常に低い確率ですが、合併症として、出血、穿孔(せんこう=穴が開くこと)が起こることがあります。穿孔が大きい場合には、緊急手術を行う必要があります。


【内視鏡と大腸がん】 大腸がんの予防につながる 内視鏡による大腸ポリープの発見・切除

・ステージTの場合10年生存率は約95%

 日本では、大腸がんによる死亡者数は増加しており、がんによる死亡原因のうち男性3位、女性で1位となっています。

 非常に恐ろしいがんと思われがちですが、実はステージTで発見された人の10年生存率は約95%と高く、他のがんと比べても早期発見・早期治療が非常に有効ながんといえます。

・ほとんどの大腸がんはポリープから発生

 また、ほとんどの大腸がんはポリープから発生し、それからがんになるには10 年程度かかるといわれています。したがって内視鏡でポリープを早期に治療すれば、その後の大腸がん発生の予防につながります。

 実際にアメリカでは内視鏡による大腸がん検診が広く行われており、内視鏡でポリープを切除することで大幅に大腸がん死亡率を減少させることに成功しています。

 一方日本では、残念ながらまだ便潜血反応を利用した大腸がん検診受診率が低く(対象者の約40%)、その後の大腸内視鏡受診率も低いため、いまだ大腸がん死亡数の減少につながっていません。

・ポリープの段階で早期に治療することが大事

 私たちが熊本で行った研究では、大腸内視鏡検査で10o以上のポリープが見つかった人は、ポリープがなかった人と比較して、5年間で10倍多く大腸がんが発見されやすいという結果が出ています(0・14%と1・4%)。ポリープが見つかる人ほど「大腸がんになりやすい体質」であるといえます。

 大腸内視鏡検査を受け、がんの原因となるポリープの段階で早期に治療することがいかに大事であるか、分かっていただけるかと思います。

 大腸内視鏡検査は、検診で行われている便潜血反応検査が陽性の場合や、腹痛、便秘、血便などおなかに症状がある場合には、保険診療(3割負担)で受けることができます。


【終わりに】

 きちんとした情報を知れば、内視鏡検査に対する「怖い」「恥ずかしい」といった漠然としたイメージが変わり、その有益性を理解してもらえるのではないでしょうか。

 自身の健康管理のために、内視鏡検査を受けることをお勧めします。


執筆いただいたのは
熊本大学光学医療診療部副部長
・日本内科学会 総合内科専門医、指導医
・日本消化器病学会専門医、指導医、九州支部評議員

熊本大学医学部附属病院
消化器内科
庄野 孝 助教