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「あれんじ」 2018年5月5日号

【元気!の処方箋】
快適な生活と健康のために治療を 睡眠時無呼吸症候群

 テレビ番組などでも取り上げられることが多い「睡眠時無呼吸症候群」。いったいなぜ起こるのか、どうすれば改善するのかなど、専門医に聞きました。(取材・文=坂本ミオ)

【はじめに】「息をしない」のではなく「できない」状態に

 「無呼吸」とは、呼吸(鼻や口での息の流れ)が10秒以上止まってしまうことをいいます。これが睡眠中に起こるのが、「睡眠時無呼吸」です。

 「睡眠時無呼吸症候群」の9割程度は、息を「しない」のではなく、しようとしているのに喉の奥がふさがり「できない」状態にある閉塞型です。今回は、閉塞型の原因や診断、治療についてお伝えします。


【症状と診断】

■突然止まり突然始まる特徴的ないびき

 睡眠中ずっといびきをかいている人のいびきが急に止まり、呼吸が止まったままの状態が10秒以上、長い人では2分以上も続きます。その後、特徴的な大きないびきによって呼吸が再び始まります。

 肥満などでもともと喉が狭い状態で、息を吸い込む力に負けて、喉がふさがってしまうために起こる「閉塞型」の典型的な症状です。

■睡眠中に呼吸が何回止まる(弱くなる)のかを検査

 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に息が止まったり弱くなったりすることが1時間に何回起きるか(AHI=無呼吸低呼吸指数)を調べ、診断します。その数値によって、軽症から重症に分けられます(表)。

 一般には、1時間あたり5〜15回が軽症、15〜30回が中等症、30回以上が重症とされ、多い人では、一晩に500〜600回も繰り返すこともあります。


■睡眠の質の低下が及ぼす日常生活への影響
閉塞型睡眠時無呼吸症候群の症状

 そうなると当然、睡眠の質が悪く、目覚めた時の頭痛や頭重感、熟睡感の欠如、日中の眠気、集中力の低下など、起きて活動している時間にも大きな影響が出てきます。

 知的活動の低下は、学業や仕事に支障を来します。本人に悪意がなくとも、周りに迷惑をかける場合もあります。仕事中の度重なる居眠りやミス、事故によって、職を失うケースもあります。

 また深刻なのは、運転時の眠気です。睡眠時無呼吸症候群の人の居眠り運転による事故は、そうでない人の7倍に上るというデータもあるほどです。


■さまざまな診療科にわたる合併症に注意
図1

 さらに注意が必要なのは、合併症です(図1)。睡眠時無呼吸症候群は心筋梗塞や不整脈、脳卒中など死に至る疾患の原因として注目されており、突然死につながる場合もあります。また、うつ病や認知症などとも関係しています。


【原因と治療】喉の奥を狭くしてしまう肥満やあごの小ささなど
図2

 睡眠時無呼吸症候群は、喉の奥が狭くなる状態によって起きます(図2)。

 日本人の患者の約2/3が肥満、1/3はあごが小さいなど他の理由によるものです。子どもの場合、へんとう肥大が影響することがあります。

 また、飲酒や睡眠薬も原因になります。「日中眠いのは、夜眠れていないからだ」と安易に睡眠薬を服用することで、かえって悪化させる場合もあるので注意が必要です。

 きちんと診断を受け、正しい治療につなげましょう。


まずは体重減量 中等症以上であればCPAP(シーパップ)を

 一般的な治療法としては、

◎体重減量 食事療法、運動療法
◎飲酒・睡眠薬服用の中止
◎睡眠体位 側臥位睡眠
が挙げられます。

 しかし、こういった生活習慣などの是正では難しい場合は、症状の重さによって、
★ 経鼻的持続的気道内陽圧(CPAP=シーパップ)
★ 歯科装具(マウスピース)
★ 外科的療法(へんとう・アデノイド摘除術など)
を考えます。

 中等症以上であれば、CPAPが代表的な治療法になります。CPAPは睡眠中に鼻あるいは鼻・口に密着するように装着したマスクを器械につなぎ、空気を送り込むことで喉を開き、呼吸ができるようにする治療です。多くの力士や芸能人もCPAPを使っていることを公にしており、日本では40万人以上が使っています。

 比較的軽症〜中等症であれば、歯科医院で作ってもらえる睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースをはめて眠ることで、随分症状が治まります。


CPAP導入は検査が受けられる病院で 継続管理はかかりつけ医に

 CPAPは、治療が必要な診断基準にあることが検査で判明すると、病院から機器一式を貸し出してもらえます(保険適用)。検査は、自宅でもできる簡易検査と、1泊入院が必要な本格的な検査「睡眠ポリグラフ」があります。

 検査の方法上、簡易検査では判定が軽くなりやすい欠点があります。正確な診断に加えて、睡眠の質、不整脈の有無も評価できることから睡眠ポリグラフでの検査をおすすめします。ただ、この検査はどこででも受けられるわけではないので、確認が必要です。

 CPAPはコンピューターが内蔵されており、データが蓄積されます。導入後は、かかりつけ医に状態の確認、機器のメンテナンスなどを引き継いでもらい、定期的に受診しながら継続しましょう。

 継続して使いながら体重減量にも取り組むことで、快適な日常生活を取り戻し、心身の健康増進が図られます。


【終わりに】たかが「いびき」と侮らないで

 自分が眠っている間のことを自分で知るのは難しいこともあり、実際に治療が必要な人の1〜2割しか治療をしていないといわれている睡眠時無呼吸症候群。

 寝室が一緒の家族が気付いたり、目覚めが悪く日中の眠気が気になる人は、呼吸器科や耳鼻科などを受診してみましょう。

 最も大きなサインは「いびき」です。いびきが止まったり始まったりする場合はもちろん、恒常的にいびきをかく人は注意が必要です。たかが「いびき」と侮らないようにしたいものです。


話を聞いたのは
熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
藤井 一彦 准教授

専門は、ぜんそく、せき、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、睡眠時無呼吸症候群など。
・日本内科学会総合内科専門医
・日本呼吸器学会専門医・指導医
・日本アレルギー学会専門医
・ICD認定医
・身体障害者福祉法指定医