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「あれんじ」 2010年9月4日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第六回】言葉の上手な受け手に

女性医療従事者によるリレーエッセー 慈愛の心 医心伝心 【第六回】

【第六回】言葉の上手な受け手に
熊本保健科学大学
言語聴覚学専攻

教授 小薗 真知子

 言葉のリハビリの仕事を始めて26年。言葉が突然消える「失語症」の方々と長くお付き合いしてきました。失語症は特殊な病気ではなく誰にでも起こりうる言語障害です。脳卒中や頭のけがで脳の言語中枢が傷つくと、意識はあるのに「相手の言うことが分からない」「言いたい言葉が出ない」「文字の読み書きができない」という後遺症が起こります。
 この失語症状を改善させるには、言語聴覚士と言葉のリハビリを気長に続ける必要があります。発病当初は人生が終わったかのように沈んでいた方が、少しずつ言葉が出て笑顔を取り戻されるとき、「言語聴覚士になってよかった」と思います。
 病前のようには言葉が滑らかでない方も、聞き手がゆったり安心できる雰囲気で言葉を交わしていくと意思が通じます。ある失語症の女性宅で訪問リハビリを行なっていたころ、言葉の十分に出てこない彼女と身振り手振り、また実物を見ながら一生懸命に伝え合うのはとても楽しい時間でした。
 コミュニケーションは、キャッチボールのようなもの。言葉の不自由な方だけが努力するのではなく、聞き手も言葉の知識を持つと意思を交わしやすくなります。言語障害のある方は心を閉ざしているのではなく、誰よりも人とコミュニケーションしたいのです。少しだけでも言語障害のことを知れば、いいコミュニケーションを取れるようになります。
 9月は「言語聴覚の日」という記念日があります。9月26日(日)の午後、《熊本パレア》で「言語聴覚の日」の行事を行います。“言葉”を知る第一歩を踏み出してみませんか?