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「あれんじ」 2018年1月13日号

【元気の処方箋】
治療の選択肢増えた花粉症

 多くの人がその症状に苦しめられている花粉症。冬が終わり、春が来るのは本来待ち遠しいものですが、花粉症の人たちは準備が必要です。
 
 今回は、花粉症の仕組みや治療法、暮らしの注意点などをお伝えします。

【はじめに】春先、秋口とさまざまな抗原が

 花粉症は、ある特定の季節に飛散する花粉により起こる季節性のアレルギー性鼻炎と結膜炎のことです。

 最も患者さんが多い花粉症の原因(抗原)は春先(2〜3月)のスギ花粉です。スギ花粉の後に飛ぶヒノキ花粉(3〜4月)、イネ科のカモガヤ花粉(5〜6月)、秋口にはキク科のブタクサ、ヨモギ花粉の患者さんが熊本ではよく見られます。

 その他ハウスダスト、ダニといった通年性のアレルギー性鼻炎も合併している場合は、どれに反応しているか区別がつきにくい時もあります。ここでは主にスギ花粉症について述べます。


【スギ花粉症の状況】増加が顕著なスギ、ヒノキ合併花粉症

 スギ花粉症は、10年ほど前から有病率が大きく増加し、全国的には人口の25%に達しているという報告もあります。熊本ではここまで多くはないようですが増加しているのは明らかです。

 特に最近ではスギ、ヒノキ合併花粉症の増加が顕著です。また以前は、多くは成人になってから発症していましたが、最近では環境や食生活の変化からか子どもの花粉症が増加して問題となっています。

 年によって花粉飛散量に差が見られ、多い年は症状がひどく、少なければ軽くて済みます。昨年(2017年)はここ3年間で最も多く、熊本市で約2500個(1㎠あたりの花粉数。例年1000個前後、宇野耳鼻科測定)。お困りになった方も多く見られました。

 今年の予測は現時点では難しいのですが、昨年よりやや少ないぐらいでしょうか。最新の花粉飛散予報の情報をインターネットなどから検索してみてください。


【発症の仕組みと症状】症状があればスギ花粉IgE(アイジーイー)抗体の有無の確認を
(図1)アレルギー反応のしくみ

 では、どのようしてスギ花粉抗原(アレルゲン)に対するアレルギー反応が起きるのでしょうか。

 鼻や目の粘膜から進入したスギ抗原物質は、既に体内で作られているスギ特異的なIgE抗体と肥満細胞上で結合し、抗原抗体反応を起こします。

 その細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が遊離し、粘膜に分布する神経や血管に作用し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり(鼻)、かゆみ、涙(目)、咳、違和感(喉)、かゆみ(皮膚)などの症状が現れます(図1)。

 これらの症状に当てはまる方は一度、医療機関でスギ花粉IgE抗体の有無を血液検査で確認してみてください。

 また、スギ花粉症の一部の方には口腔アレルギー症候群といって、スギ花粉と一部共通の抗原を持つある特定の食べ物(フルーツ、トマトなど)を食べると、口腔内がアレルギー反応を起こし、口が腫れたりイガイガするなどの症状が出る方もいます。


【治療法】抗アレルギー薬、レーザー治療 スギ花粉舌下免疫療法など
舌下免疫療法

 治療法は、抗アレルギー薬を早めに飲み始める初期療法が最も手軽な治療法です。既にOTC(市販薬)を含め多くの薬があります。

 花粉飛散期間は飲み続ける必要がありますので、眠気などの副作用が少なく、効果が出る自分に合った薬を服用しましょう。

 また、花粉飛散量の増加で症状が悪化しますので、飲み薬だけでなく点眼薬や点鼻薬を併用します。

 重症の人にはレーザー治療などの対症療法に加え、最近では根本的治療としてアレルゲン免疫療法の一つであるスギ花粉舌下免疫療法が保険診療可能となり注目されています(表1)。
 
 これは、スギ花粉の抗原エキス少量を毎日体内に取り入れることで体を慣れさせ、アレルギー反応を起こさせないようにする治療法です。長期間(約3年)の服用が必要ですが、治療を継続するとかなり長期的に効果が期待できます(図2)。

 レーザー治療も舌下免疫療法も花粉飛散の始まる前から治療を始めておく必要があり、これらの治療はどこの医療機関でもできるわけではないので、できるところを事前に調べておく必要があります。


(表1)


舌下免疫療法の特徴
(図2)アレルゲン免疫療法のメカニズム


【暮らしの注意点】花粉飛散情報をチェックして
(図3)

 スギ花粉は春先の雨上がり、風の強い天気の良い日に大量に飛散します。花粉飛散時はメガネやマスクを着け、テレビや新聞、インターネットなどからの花粉飛散情報(図3)を有効に利用し、不要不急の外出を控える生活をしましょう。

 また、この季節は家の窓や戸を閉め、布団などを戸外に干さないようにします。

 家に入る時は服をはたき、家の中に花粉を持ち込まないようにしてください。帰宅したら洗顔、うがい、鼻をかむなども必要です。


【終わりに】

 花粉症は一度発症すると、自然治癒がほとんど見られない厄介な病気です。

 軽症なら、飛散シーズンに花粉を回避、抗アレルギー薬を飲むことで乗り切れますが、重症の方は大変です。医療機関に相談し、舌下免疫療法などの体質改善療法を検討することをお勧めします。


執筆いただいたのは
・医学博士
・耳鼻咽喉科専門医
・アレルギー学会認定専門医
・認定補聴器相談医

定永耳鼻咽喉科クリニック 定永恭明(さだながやすあき) 院長