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「あれんじ」 2017年11月4日号

【ママの心配・不安に応える 子育て応援クリニック】
鼠径(そけい)ヘルニア

Q 男の子は鼠径ヘルニアに注意するようにと聞きました。どんな病気で、どうしてでしょうか?

緊急手術が必要になることも

 お母さんのおなかの中で、胎児の精巣は腎臓付近で作られ、妊娠7〜9カ月頃に陰のうの中に降りてきます。精巣が陰のう内へと移動すると、その通り道は閉じてしまいます。それが生まれた後も開いたままになっていると、鼠径ヘルニアが起きることがあります。

 赤ちゃんが泣く時にはおなかにも力が加わります。通り道が開いたままだと、腸の一部がその中に押し出されて、鼠径部と呼ばれる脚の付け根の皮下や陰のう内まで出てきます。これを鼠径ヘルニアと呼びます。

 泣き止むと、おなかの力が抜けて腸が元に戻るのですが、たまに押し出されたままになってしまうことがあります。それが長く続くと腸への血液の流れが悪くなったり、腸の中を食べ物が通りにくくなったりして、緊急手術が必要になることがあります。


男の子の発症は女の子の6〜10倍

 女の子では卵巣が陰のう内へと移動する必要がないので、早い時期に通り道は閉じてしまいます。そのため、鼠径ヘルニアは女の子には起こりにくく、男の子の発症頻度は女の子の6〜10倍といわれています。女の子でもまれに起きることがあり、鼠径部や大陰唇の上のところの腫れとして見つかることがあるので注意は必要です。

 赤ちゃんの鼠径ヘルニアは生後8〜9カ月までに自然に治ることが多いので、それまでは様子を見ることがほとんどです。その後も繰り返す時には手術を行います。鼠径部の腫れや、男の子の陰のう、女の子の大陰唇上部の腫れを認めた時には、鼠径ヘルニアを疑って、できるだけ早くかかりつけ医に相談してください。


鼠径部(脚の付け根)や陰のう内まで腸の一部が出てくる病気です
熊本大学大学院
生命科学研究部
小児科学分野
教授 中村公俊