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「あれんじ」 2017年8月5日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第63回】異文化コミュニケーション 〜同居のススメ〜

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第63回】

【第63回】異文化コミュニケーション 〜同居のススメ〜
医療法人信和会
城ケ崎病院

精神科医 松野美紀

 平成27年12月、夫の母が亡くなりました。享年100、大往生でした。義母は私の実の祖母と同じ年齢で、私にとって最初から「ばあちゃん」でした。

 義母が長く一人暮らしだったため、当たり前のように同居となりました。しかし当初は勝手がまるで分からず、言葉も慣習も生活リズムも食事も違い、まさに異文化。土地柄の違いに加えてジェネレーションギャップも著しく、慣れるのが大変でした。

 それでも、この「異文化」に触れて、私自身はとても成長できたと思うのです。

 息子がようやくつかまり立ちができるようになった頃、テーブルのポットが倒れて足に大やけどを負いました。治るのに半年かかり、やけどの跡も残ってしまいました。

 てっきり「母親がよく見ていなかったから」と言われると思ったのですが、夫も義母も夫の姉たちも私を責めなかったのです。この家(地域)の「過ぎたことは仕方ないから、この先を考える」という思想に救われ、目が覚める心境でした。そんな日常が、今の自分の診療にも十分役に立っていると思うのです。

 後年、生意気ざかりになった息子に本気で怒って近距離からペットボトルを投げた義母。顔面を直撃して泣き出した息子に「男だから泣くな」と言うような気性の強さもあり、生前はケンカもしました。

 しかし、穏やかに見送ることができたのは、義母も新しい文化を受け入れてくれたからだと思います。

 嫁姑問題は永遠のテーマですが、異文化交流と考えてはいかがでしょうか。