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「あれんじ」 2017年7月1日号

【元気の処方箋】
行く前に学ぼう!海外旅行の健康管理Lesson

 海外旅行を楽しむ人が増えています。旅を満喫するには、体調が万全なことが一番です。そのためには何に注意すればいいのか、もしもの時はどうすればいいのかなど「海外旅行の健康管理」について、旅と医療、それぞれの専門家に話を聞きました。(取材・文=坂本ミオ)

【Lesson1】海外旅行に行く前に…

 旅行会社のツアーに参加する、個人でプランを立てて行く…など、旅の楽しみ方はそれぞれです。
 旅行会社を利用する場合、海外旅行保険を含む注意事項の説明を受けられることが多いのですが、個人で行く場合は自分で調べ、より周到な準備が求められます。

●既往症(持病)の情報をきちんと伝えよう

 旅行会社の人に、既往症の情報を明確に伝えましょう。既往症による症状や発作などが起きた場合など緊急時の手当てについても併せて伝えることで、「もしも」の時に備えられます。

 一緒に行く友人などにも伝えておきましょう。

●英語の診断書の用意を

 急に何か起こった際に役立つのは、英語の診断書です。持病がある場合は、旅行に行くことをかかりつけ医に伝え、発行してもらいましょう(有料)。

●事前の情報収集を!

 旅行先で具合が悪くなったときの備えをしておきましょう。特に個人で行く場合は、事前の情報収集がより必要です。

 外務省海外安全ホームページの「医療・健康関連情報」には、国別に公館の住所、衛生・医療事情、必要な予防接種をはじめ、通訳サービスや日本語での受診可能な医療施設、「もしものときの医療英語(フランス語・スペイン語・ロシア語・中国語・ポルトガル語)」の一口メモなどが掲載されています。

 あらかじめプリントしておいたり、手帳に必要事項をメモしたりしておくと安心です。

●必要な薬は、「多めに」「分けて」

 必ず服用しなければならない薬は多めに持って行きましょう。予定通りの日程に帰って来られないこともあります。

 また、ロストバゲージといって、預けた荷物が遅延や紛失することがあります。薬は小分けし、いくつかのバッグに分散して入れておきましょう。

 注射用インスリンのような液体の薬は凍る危険性があるので、手元に持っておきましょう。

◆  ◆

 「旅行を止められるのでは?」と心配し、旅行することや既往症があることを医師や旅行会社に隠すのはやめましょう。

 持病があるだけで旅行を止められることはありません。自身の状態を把握し、旅先で正しい情報提供ができることが大事です。


【Lesson2】海外旅行中…

 行き先によって衛生事情などが異なりますが、最も注意すべきは、水分補給やアルコール摂取を含め、口に入れるもの。いつもと違う食事を楽しむのは旅の醍醐味ですが、“調子に乗らない”よう心がけたいものです。

●飛行機内で飲み過ぎない!

 まず注意したいのが、機内での“飲み過ぎ”。アルコールを楽しむのは結構ですが、飲み過ぎは、ロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)の原因にもなります。

 また、目的地について活動を始めた途端に熱中症を発症するなどの危険性が高まります。

●空港でまず水を調達

 日本では手軽に買えるミネラルウォーターのペットボトルですが、海外では、そうはいかないところもあります。

 そこで、着いた空港内で購入することをおすすめします。

 トイレの回数が増えるのが心配であれば、より効率的に水分補給ができる経口補水液、あるいはスポーツドリンクの粉末を持って行き、現地で購入したペットボトルの水に入れて混ぜて飲むなど工夫して、熱中症にならないよう注意しましょう。

●無理をしない!

 「せっかくここまで来たのだから…」と、旅先ではつい無理をしがち。それが体の負担になることも多いようです。

 また、体調に異変を感じても「迷惑をかけるから」と、周りに知らせず無理して一緒の行動を取り、体調をさらに悪化させ、結果として、もっと迷惑をかけてしまう…なんてことも。

 気分や体調に変化があれば、早めに周りに伝えましょう。

◆  ◆

 今は、同じ宿での連泊や時間にゆとりを持たせたツアーもあります。そういったものを利用するのもおすすめですよ。


【Lesson3】海外旅行から帰ったら…

 帰国後、体調に変化がないか注意しましょう。楽しかった旅の思い出を皆さんにお裾分けするのは、少し落ち着いてからでも大丈夫です。

●発熱や下痢が続くときは、医療機関の受診を

 帰国の際、すでに発熱など心配な症状があれば、検疫所の担当者に相談しましょう。

 帰国後に発熱や下痢が続く場合は、速やかに医療機関を受診してください。

 また、例えばジカウイルス感染症の流行地域である中南米などからの帰国後は、症状の有無にかかわらず、虫よけ剤を使うなど蚊に刺されないための対策を少なくとも2週間程度は行う必要があります。厚生労働省検疫所のホームページなどを参考にしてください。


【Lesson4】糖尿病の人が海外旅行を楽しむために
公益財団法人日本糖尿病協会発行の英文カード

 糖尿病は大変多い疾患ですが、状態をコントロールできていれば海外旅行は可能です。旅行を楽しむために準備するもの、気を付けたいことをお伝えします。

●患者用ID・英文カードを持って行こう

 公益財団法人日本糖尿病協会発行の糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)と英文カードは、とても役に立ちます。

 英文カードの表紙には糖尿病患者であることが5カ国語で書かれ、中面には治療内容、合併症の状況などが記入できます。インスリン注射セットを持っていかなければならない場合、空港などでこのカードで説明ができます。

 発行は無料です。受診先に尋ね、記入してもらいましょう(受診先で入手できない場合は、同協会のホームページ「療養グッズの入手方法」で)。

●主治医に旅程を伝えて

 インスリンを使っている場合は、フライト時間や時差を考えて単位を加減する必要があることも。旅行前に、行き先やフライト時間を主治医にきちんと伝えて、調節してもらいましょう。

 また、航空会社によっては、機内食に糖尿病食を提供できるところもあります。事前に問い合わせてみてください。

●低血糖、脱水に気をつけて

 旅先では歩き回り、いつもより運動量が増えます。低血糖に備えて、ブドウ糖やあめなどを持ち歩くことを忘れないように。水分補給も同様です。

 熱が出たり、食事が取れないような体調悪化があれば、現地の医療機関にかかってください。具合が悪くなったらどの病院に行くのか、10ページにある方法などであらかじめ調べておくと安心です。


話を聞いたのは(Lesson1、2)
東海大学経営学部
観光ビジネス学科
小林寛子教授

<専門分野>
・エコツーリズム論
・国際ツーリズム論
<所属学会>
・日本国際観光学会
・日本観光研究学会


話を聞いたのは(Lesson3、4)
熊本大学医学部附属病院
地域医療・総合診療実践学寄附講座
香田将英医員
熊本大学大学院生命科学研究部公衆衛生学分野博士課程

熊本大学医学部
地域医療支援センター
後藤 理英子 特任助教
熊本県地域医療支援機構専任医師